2021年12月、香港では立法会議会選挙が行われ、そしてオミクロン株の市中感染が広がり始めた。中国政府の香港への締め付けが年々強くなる中で香港市民は政治に無関心になっているが、そんな中でも騒ぎが起きた。感染が広がり、政府が対策におおわらわになっている中、大規模パーティーに複数の政府高官が参加していたことがわかったのだ。(フリーランスライター ふるまいよしこ)
香港市民が知らない議員が選挙で大量当選
昨年12月に行われた、香港の立法会議員選挙(参考記事:『中国が望む「正しい選挙」とは?香港選挙期間中の摩訶不思議なアレコレ』)。投票日翌日には開票も終わっていない時点で、すぐさま中国政府が「香港の民主主義の実践に新たなムードを作り、選挙制度を改善した」と大絶賛。その日の午後に発表された当確議員のリストには、市民が初めて聞く名前がズラリと並んだ。なぜなら、447万人の市民有権者にはわずか20議席しかあてがわれなかった一方で、最大枠(40議席)の「選挙委員会枠」で選出された議員のほとんどは、選挙期間中もメディアなどが主催した公開政策討論会にも姿を見せなかったからだ。
この選挙委員会枠で当選した人たちの中には、いわゆる「新移民」と呼ばれる、中国から移民してきて香港市民権を手に入れた人も多く含まれていた。メディアの質問に対し、香港で話されている広東語ではなく、手っ取り早く北京語で答える議員も出現したほどだ。筆者はその様子を見て、今後遠くない将来に立法会で「広東語がわからない」と主張する議員が出現し、じわじわと議会内の公用語が北京語に変更されざるを得ない状況になるだろうと感じた。
実際には、昨今ほとんどの香港人が多少なりとも北京語を聞き取れ、話せるようにはなっている。だが、思いきり自分の考えを表現するにはやはり広東語か英語のほうがスムーズだという市民のほうがずっと多い。だが、議会で直接選挙の洗礼を受けずに親中勢力議員が増え続ければ、「広東語よりも北京語」を主張する人が出てきて、だんだん「香港の議会」が「中国の一議会」へと変容していくことは想像できる。