経済戦争は、実際の戦争とほぼ同じくらい元に戻すのが困難かもしれない。欧州連合(EU)はウクライナで民間人が虐殺されたとの報道を受け、ロシアに対する追加制裁を明らかにする見通しだ。ロシア軍の失態が和平協定に道を開くとの期待が高まっているにもかかわらずだ。いずれにせよ、経済的なエスカレーションの影響は長い尾を引くことを歴史は示している。米政府と同盟諸国は2000~15年、イランに対する制裁を強化。イランの銀行を決済ネットワークの国際銀行間通信協会(SWIFT)から排除した。米財務省は同国と取引した相手を容赦なく処罰し、米国以外の企業に対して「二次的制裁」の適用さえ実施した。2015年以降、制裁は緩和された。それでもイランの銀行は、国際決済を行うための関係再構築や為替清算へのアクセスに苦労した。90億ドル(約1兆1160億円)の罰金を科されたBNPパリバのようなケースはなお記憶に新しく、欧米の金融機関は慎重だった。結局、彼らには予知能力があったことになる。米トランプ政権は2018年、制裁を再び強化し、欧州の航空・防衛大手エアバスのような企業の足をすくった。同社はイラン航空にジェット機100機を売却する2016年の契約を遂行することができなくなった。
対ロ制裁で生まれた新世界、元に戻せず
イランの事例が示すように、ロシアへの制裁が解除されたとしても世界経済の分断は残る
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