仕事をするうえで最も大切にすべきスキルは何か――。いざ、そう聞かれると困ってしまう人が多いかもしれない。特に若いビジネスパーソンは答えに窮してしまうことが多いだろう。そこで当連載ではその答えを探すため、いま注目の経営者(社長)たちにその質問をあえてぶつけてみようと思う。数々の苦難を乗り越え、成功を手にした者だからこそ語れる「仕事の極意」がきっとあるはず。成果を生み出すために本当に必要なものは何なのか、(テーマを絞るため、原則として下記の8つのスキルの中から選んでもらい)じっくり語ってもらいたいと思う。

1)情報収集 2)コミュニケーション 3)整理術 4)アイデア・発想 5)ドキュメンテーション(表現力) 6)人脈づくり 7)行動管理 8)モチベーション

 彼らの言葉は、多くのビジネスパーソンにとって貴重なメッセージとなると思う。いまの自分よりも一歩上を目指したいと思っている人たちにぜひ読んで欲しい。


 当連載にご登場いただく6人目は、ライフネット生命保険株式会社 岩瀬大輔 代表取締役副社長。ネット専業の生保会社として設立し、ついには昨年11月、業界初の「保険料の原価開示」に踏み切ったライフネット生命保険。あえて業界のタブーを破り、保険業界に風穴を開けたこの会社は、2人のトップが支えている。その1人が、岩瀬氏。32歳という若さながらも、親子ほど年の離れた出口社長とタッグを組み、共同経営パートナーとして活躍している。

 岩瀬氏が、まったく未経験の保険業界に飛び込み、新会社を立ち上げたのはなぜか。学生時代に司法試験合格、コンサルタント等を経て、米国留学でMBA取得。そして起業――。華麗なキャリアの向こう側ある、1人のビジネスマンとしての彼の“素顔”に迫ってみよう。今回から2回に渡って紹介する。

■ 社長ファイルNo.6 ■

ライフネット生命保険株式会社
代表取締役副社長 岩瀬大輔 氏

■ 岩瀬副社長が選んだ「仕事の極意」(スキル)は・・・ ■

コミュニケーション

岩瀬大輔岩瀬大輔(ライフネット生命保険株式会社 代表取締役副社長)
1976年、埼玉県生まれ。東京大学法学部卒。大学在学中に司法試験合格。ボストン・コンサルティング・グループ、リップルウッド・ホールディングスを経て、ハーバード経営大学院に留学。日本人では4人目となる上位5%の優秀な成績(べイカー・スカラー)を収め、卒業。帰国後、出口治明氏(現・ライフネット生命社長)に出会い、現職。著書に、留学中の出来事をブログに綴った『ハーバードMBA留学記』(日経BP社)、伊藤真氏と共著で『超凡思考』(幻冬舎)がある。


高城 そもそも、なぜ起業しようと?

岩瀬 世代に関係があるかもしれません。僕らは就職超氷河期の98年入社組なんですが、転職している人も多いし、自分でビジネスを始めた人もけっこういる。僕自身も、2004年にハーバード経営大学院に留学する前から、自分で何かやりたいなぁとは漠然と思っていました。自分らしさが出せて、社会にインパクトを与えられる仕事をしたいと。

 そして留学中に一時帰国したとき、あすかアセットマネジメントの谷家衛さんにお会いする機会があったんです。そのとき、谷家さんから、「一度しかない人生なんだから、自分の個性を活かす生き方をしたら?」と言われたんです。さらに、「応援するから事業を立ち上げなさい」とも。これが、本気で起業しようと思ったきっかけとなりました。

高城 いろんな方にお会いしたと思いますが、なぜ「谷家さん」だったんですか?