「新電力」の電力小売業界が揺れている。電力の調達価格の高騰で仕入額と販売額に逆ざやが生じ、販売するだけ赤字。次代のニュービジネスの代表格と思われた新電力が存続の危機にひんしている。新規申込みを停止する新電力が相次ぎ、採算改善が見通せず電力小売事業からの完全撤退を決断する新電力も出てきた。業界が騒然とするなか、3月25日に自治体や官公庁向けの電力販売で業績を伸ばしたホープエナジー(福岡市)が負債約300億円を抱えて破産を申請した。業界を揺るがせた新電力大手のF-Power(東京都港区、会社更生法、負債464億円)が経営破綻してからちょうど1年。エネルギー価格の高騰は、ロシアのウクライナ侵攻という不安要素も加わって深刻化の一途をたどり、新電力にとって厳しい局面が続く。(東京商工リサーチ情報部 増田和史)

自治体・官公庁向けで急拡大の
ホープエナジーが破産

写真:ホープエナジーが入居していたビルホープエナジーが入居していたビル(東京商工リサーチが撮影)

 3月に破産を申請したホープエナジーは、東証マザーズと福証Q-Boardに上場するホープ(福岡市)の子会社だった。持ち株会社化で2021年12月にホープから会社分割され、電力小売事業が切り離された。電力小売事業はグループ売り上げの93.1%(2021年6月期)を占める中核事業で、電力販売量では全国の新電力の16位(2021年累計、資源エネルギー庁公表)に位置していた。

 もともとホープは、自治体向けサービスを展開するベンチャー企業だった。自治体の遊休資産・未利用スペースへの広告提案や、自治体情報誌の制作請負や情報配信アプリ作成など、公共サービスの請負で事業を軌道に乗せ、2016年6月に株式上場を果たした。