偶然取った大学の授業から起業を志す

土屋:その後、不幸中の幸いで病気が薬で抑えられる種類のものだったので、病院から出てくることができ、大学に戻ろうと思いました。それで大学5年生の時にたまたま受けた授業にベンチャー企業論があったんです。起業家のケーススタディを学ぶ授業で、孫正義さん、三木谷浩史さん、堀江貴文さん、『社長失格』の板倉雄一郎さんについて知りました。

いわゆるアントレプレナーシップの授業なのですが、当時は相当珍しかったんじゃないですかね。

ーーその授業はなぜ取ろうと思ったんですか?

土屋:それは記憶にないんですよね。本当に、たまたまなんです。

その授業で、孫正義さんも26歳の時にB型肝炎になって、26歳から29歳まで入退院を繰り返していたことを知りました。当時のB型肝炎はなかなか治らない病気なんですが、運良く手術が成功して今の孫正義さんが存在することとか。

三木谷さんも20代でハーバード大学に行って、日本興業銀行に勤めていたところで阪神大震災があり、叔父さんと叔母さんを亡くしてしまったこととか。そういうエピソードを知ったんですね。

そこから自分も起業を意識し始めました。

ーーもともと起業家を目指してはいなかったのですね。

土屋:21歳までは意識してなかったですね。

平尾:そう考えると起業を意識してからデビューまでが早いですよね。起業したのは28歳ですか。シリコンバレーに行ったのは何歳でしたっけ?

「死と向き合った人」が行動力を高める理由平尾 丈(ひらお・じょう)
株式会社じげん代表取締役社長執行役員 CEO
1982年生まれ。2005年慶應義塾大学環境情報学部卒業。東京都中小企業振興公社主催、学生起業家選手権で優秀賞受賞。大学在学中に2社を創業し、1社を経営したまま、2005年リクルート入社。新人として参加した新規事業コンテストNew RINGで複数入賞。インターネットマーケティング局にて、New Value Creationを受賞。
2006年じげんの前身となる企業を設立し、23歳で取締役となる。25歳で代表取締役社長に就任、27歳でMBOを経て独立。2013年30歳で東証マザーズ上場、2018年には35歳で東証一部へ市場変更。創業以来、12期連続で増収増益を達成。2021年3月期の連結売上高は125億円、従業員数は700名を超える。
2011年孫正義後継者選定プログラム:ソフトバンクアカデミア外部1期生に抜擢。2011年より9年連続で「日本テクノロジーFast50」にランキング(国内最多)。2012年より8年連続で日本における「働きがいのある会社」(Great Place to Work Institute Japan)にランキング。2013年「EY Entrepreneur Of the Year 2013 Japan」チャレンジングスピリット部門大賞受賞。2014年AERA「日本を突破する100人」に選出。2018年より2年連続で「Forbes Asia's 200 Best Under A Billion」に選出。
単著として『起業家の思考法 「別解力」で圧倒的成果を生む問題発見・解決・実践の技法』が初の著書。

土屋:シリコンバレーに行ったのは27歳です。8ヵ月の娘と妻と一緒に行きましたが、家族の誰1人英語が喋れない。1人は言語すら喋れないという。

平尾:普通は行かないですよね。行動力がやっぱりすごいなと思います。

土屋:当時、シリコンバレーに知り合いは一人もいなくて。海外すら行ったことがなくて、パスポートもシリコンバレーに行くために初めて取りました。

こんな状態で行くって絶対ありえないですよね。「優れたやり方」ではありえないですよ。

平尾:そうですね。土屋さんならではの「別解力」だと思います。