デザイン思考と起業家の思考法の違いとは

ーー『起業家の思考法』はいかがでしたか。

土屋:今日の対談テーマに「デザイン思考と起業家の思考法の違い」があったと思うんですけれど、僕はどちらかというと「起業家の思考法」なんですよ。

平尾:そうですね。土屋さんは「起業家の思考法」を持った方だと思います。別解力が高いんです。

土屋平尾さんの本を読んで僕も共感したというか、すごく近い考え方をしていると感じました。

一番面白いのはこのコラムですね。平尾さんの幼少期のエピソードとか知らなかったですし。

別解に「バツ」がついたとき、学校の先生に食い下がるとか。起業家にはそういうタイプが多いですよね。僕もやっぱりそうでしたし。「なんで小学生はダメで、中学生になったら正解になるのか意味がわからない」と思っていました。従順じゃない人が起業家になるケースは多いと思います。

平尾:私は「誰かが既にやっていること」だとつまらなくなってしまうタイプで、オリジナルを作るほうが好きなんですよね。仕事のやり方も同じだと思ってるんです。

「デザイン思考」と「起業家の思考法」の違いも教えてほしいです。デザイン思考ってすごいトレンドじゃないですか。でも、イノベーションのつくり方としては似ているのかなと思ったんですよね。

土屋:デザイン思考も90年代後半から2000年代中盤に流行りはじめました。当時の環境の中で、戦略とかマーケットの規模が「優れたやり方」とされ、そこでの差別化ができなくなっていたのが理由だったと思います。ユーザー自身が認識していない深い課題をインタビューと観察によって炙り出していく。「デザイン思考」はビジネスのマーケットにおける当時の別解力だったのではないかと。

本の中の「発見力」という問題発見の部分は、デザイン思考と共通していると思います。

デザイン思考はプロトタイプを作って早く試して改善していく、PDCAサイクルの話でもあるので。

平尾:2000年代の「戦略で勝とう」に対して「それは違うよ」と提示した別解がデザイン思考だったんですね。何故こんなに流行ってるんですか?

土屋:デザイン思考は「デザイナーの考え方をビジネスパーソンが使えるようにフォーマット化したもの」だと思います。

私たちの「UI/UXのデザイン」はプロダクトへの落とし込み力みたいなものなので、少し違うんです。

「デザイン」っていう言葉が広すぎるから混同されているんですけれど、それはそれでラッキーというか、いい意味で誤解されていると思います。多くのビジネスに「デザイン」が浸透するきっかけになったので。