コロナ禍で家にいる時間が増えたことにより、「自宅のコロナ特需」が生まれた。しかし、コロナの常態化でこの好況は終わりを迎えつつある。家の買い手・売り手は、今後の変化にどう適応していけばいいのだろうか。(スタイルアクト(株)代表取締役/不動産コンサルタント 沖 有人)
コロナ特需の「2つの側面」とは
不動産業界はコロナのダメージが少ない業界の一つである。衣食住というように、住まいはいつでも誰にでも必要であるから、有事にも影響を受けにくい。その上、リモートワークが増える中、家にいる時間が増え、家に対するニーズは変わった。そこで生まれたのが「コロナ特需」と呼ばれる顧客層である。
しかし、コロナが常態化し、コロナ特需は終焉(しゅうえん)を迎えつつある。自宅を求める人も、不動産業界に携わる人も、今後変化する市場に適応しなければならない。その認識を新たにしないで判断が遅れると、後悔先に立たずとなるかもしれない。
コロナ特需とは、2つの側面を持つ。一つは「もう1部屋需要」で、リモートワークが多くなったことに起因する。持ち家でも賃貸でも、もう1部屋多く欲しい顧客層が増え、需給のミスマッチが起こる。持ち家では4LDKが中心になる新築分譲戸建てが飛ぶように売れていった。賃貸でも、ワンルームから1DK・1LDKのニーズが増えた。1DKに至ってはそもそもストック数が少ないこともあり、一時的に家賃単価は高騰した。しかし、直近は供給が急増したこともあり、一部のエリアでは1DKの過剰在庫が増えつつある。
コロナ特需のもう一つの側面は、賃貸から持ち家への流れである。賃貸は狭く、仕様や設備水準が持ち家よりも低く、新築・中古の分譲マンションや戸建てがその不満の受け皿になった。新築マンションの売れ行きは明らかに良くなったし、中古マンションの在庫は減少し、需給ひっ迫で価格は高騰した。新築分譲戸建ての在庫の急減で、顧客層は注文戸建てに流れて着工は増えたし、中古の戸建てさえ在庫が大幅に減少した。コロナが需要を喚起したことは確かである。
「想定外」だったコロナ特需
2020年4月の最初の緊急事態宣言が出る前は、持ち家の売れ行きは芳しくなかった。これはマンションも戸建ても同じだったが、特に新築分譲戸建ては大量の在庫を抱えていた。そこに、外出自粛を迫る緊急事態宣言が出たのだから、それまで以上の売れ行き悪化が予想された。そのため、この年の4~5月は大幅な値引き販売を行っている。コロナ特需が起こるなんて販売側も想定していなかったのだ。