ドルはほぼ2年ぶりの高値を更新しつつある。押し上げ要因となっているのは、米連邦準備制度理事会(FRB)の迫り来る利上げや米国の力強い経済成長、そして世界の地政学的な混乱だ。主要16通貨のバスケットに対するドルの価値を示すウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)ドル指数は過去15営業日のうち13日で上昇し、2020年5月以来の高水準にある。ドルは円に対し年初から10%超、対ユーロでは5%超それぞれ上昇している。ドルは今年これまでの上昇により、新型コロナウイルス感染拡大で市場がパニックに陥った2020年3月の水準へと近づいている。コロナ下のパニックでは世界の投資家がドルに殺到し、世界的なドル不足とFRBの介入を引き起こした。ドル高は外国からモノを輸入する米企業の利益や、外国製品を購入する米消費者の購買力を押し上げる。一方で多国籍企業にとっては、米国外での製品競争力を損ない、海外の収益をドルに換算するコストがかさんで打撃となる恐れがある。