NHK「プロフェッショナルの流儀」で紹介され話題沸騰! 1200年続く京都の伝統工芸・西陣織の織物(テキスタイル)が、ディオールやシャネル、エルメス、カルティエなど、世界の一流ブランドの店舗で、その内装に使われているのをご存じだろうか。衰退する西陣織マーケットに危機感を抱き、いち早く海外マーケットの開拓に成功した先駆者。それが西陣織の老舗「細尾」の12代目経営者・細尾真孝氏だ。その海外マーケット開拓の経緯は、ハーバードのケーススタディーとしても取り上げられるなど、いま世界から注目を集めている元ミュージシャンという異色の経営者。そんな細尾氏の初の著書『日本の美意識で世界初に挑む』がダイヤモンド社から発売。閉塞する今の時代に、経営者やビジネスパーソンは何を拠り所にして、どう行動すればいいのか? 同書の中にはこれからの時代を切り拓くヒントが散りばめられている。同書のエッセンスをお届けする。

美意識を高めるため、誰にでもできるシンプルな方法とは?Photo: Adobe Stock 写真はイメージです

本物に触れる体験が美意識を磨く

 美意識を育てる第一の方法は、美しい物を使うことです。「本物の美に触れる」ことと言ってもよいでしょう。

 良質な物に触れるときに大切なのは、物として雑に扱うのではなく、対等に物と向き合うということです。物と真摯に向き合うことで、物から得られるもの、学ばせてもらうもの、想いを馳せられるものが出てきます。

 物を使うことで美意識を磨くためには、この基本的な姿勢が重要です。

 私はふだんワインを飲むのに、オーストリアの由緒あるガラス工芸メーカー、ロブマイヤーのワイングラスを使っています。「カリクリスタル」という、極薄のクリスタルガラスでつくられたグラスです。ロブマイヤーのグラスは、驚くほど軽く、薄く、エレガントなのが特徴です。

 その繊細なガラスの薄さや、熟練技術が注ぎ込まれた凛としたフォルムから、「大切に扱おう」という気持ちが自然と湧いてきます。

 このように物に丁寧に向き合って、「気を遣う」という部分がすごく大事だと思います。美しい物を丁寧に使うことで、その人の所作は磨かれ、その物によって美意識は育まれていくのです。