美意識を高める体験を、積極的につくることが大切

　私自身も、骨董屋さんからの勧めで飛鳥時代の布を見に行ったことがあります。

　これはほとんど博物館に展示されるような希少な品なので、「触れる」ことはできなかったのですが、一〇〇〇年以上が経っているいまも柄の形跡が残っており、当時の美しさが想像できました。

　こうした美意識を高める体験を、積極的につくることが大切です。

　常に肌に触れる衣服の世界は、いちばん美意識を高めるのに効果的でしょう。

　大きな仕事をやり遂げた後で、「自分へのプレゼント」として、丁寧につくられた服やバッグ、アクセサリーなどを買う人がいます。良質なものを身につけ、触れるというのは、「自分を成長させる」という意味でも理に適っています。

　私としては、美意識がたくさん込められている、きものを仕立てていただくのもお勧めしたいです。

細尾真孝（Masataka Hosoo）
株式会社細尾 代表取締役社長
MITメディアラボ ディレクターズフェロー、一般社団法人GO ON 代表理事
株式会社ポーラ・オルビス ホールディングス 外部技術顧問
1978年生まれ。1688年から続く西陣織の老舗、細尾12代目。大学卒業後、音楽活動を経て、大手ジュエリーメーカーに入社。退社後、フィレンツェに留学。2008年に細尾入社。西陣織の技術を活用した革新的なテキスタイルを海外に向けて展開。ディオール、シャネル、エルメス、カルティエの店舗やザ・リッツ・カールトンなどの5つ星ホテルに供給するなど、唯一無二のアートテキスタイルとして、世界のトップメゾンから高い支持を受けている。また、デヴィッド・リンチやテレジータ・フェルナンデスらアーティストとのコラボレーションも積極的に行う2012年より京都の伝統工芸を担う同世代の後継者によるプロジェクト「GO ON」を結成。国内外で伝統工芸を広める活動を行う。2019年ハーバード・ビジネス・パブリッシング「Innovating Tradition at Hosoo」のケーススタディーとして掲載。2020年「The New York Times」にて特集。テレビ東京系「ワールドビジネスサテライト」「ガイアの夜明け」でも紹介。日経ビジネス「2014年日本の主役100人」、WWD「ネクストリーダー 2019」選出。Milano Design Award2017 ベストストーリーテリング賞（イタリア）、iF Design Award 2021（ドイツ）、Red Dot Design Award 2021（ドイツ）受賞。9月15日に初の著書『日本の美意識で世界初に挑む』を上梓。