佐々木朗希の偉業目前の降板は“英断”、「急がば回れ」育成計画はぶれず完全試合を達成した佐々木朗希投手 Photo:JIJI

シーズン序盤のプロ野球で、ロッテの3年目右腕、20歳の佐々木朗希が世界を驚かせる快投を続けている。4月10日のオリックス戦で完全試合を史上最年少で達成した佐々木は、続く17日の日本ハム戦でも8回までパーフェクトピッチングを継続。球数が100を超え、疲労を懸念した井口資仁監督が将来を見据えて決断した交代には賛否両論が巻き起こった。高校時代から注目されてきた「令和の怪物」は野球界の「至宝」へ一気に昇華を遂げ、無双のオーラをも身にまといながら、次回登板予定となる24日のオリックス戦に臨む。(ノンフィクションライター 藤江直人)

メジャーでも直近では10年前
「完全試合」達成の難しさ

 平成のプロ野球で完全試合が達成されたのはたった一度だけ。1994(平成6)年5月18日の広島戦で歴史に名を刻んだ、当時30歳の槙原寛己(巨人)は試合後のお立ち台でも夢心地だった。

「ピッチャーはみんな憧れるもの。ピッチャーをやっていて本当に良かった」

 19世紀後半に幕を開けるメジャーの長い歴史でも23度にとどまる完全試合は、現時点で2012年8月15日のフェリックス・フェルナンデス(マリナーズ)を最後に達成されていない。

 完全試合の定義をなぞれば難易度の高さがわかる。相手チームの打者を一度も出塁させず、その上で勝利しなければいけない。ヒットは言うまでもなく、四死球や味方のエラーも許されない。

 しかも、完全試合を複数回達成した投手は日米を通じていない。だからこそ、直近の2試合で佐々木が見せた姿は世界でただ一人、異次元の領域に足を踏み入れているとしか映らなかった。

 佐々木がプロ野球史上で16人目、28年ぶりとなる完全試合を史上最年少の20歳5カ月で達成した10日のオリックス戦の直後。ダルビッシュ有(パドレス)は自身のツイッター(@faridyu)でこうつぶやいた。

「今日の状態だとメジャーに来ても同じようなピッチングが出来ていると思います」

 この言葉は、ファンを含めて、野球に携わる全ての人間が抱く思いを代弁していたと言っていい。

 17日の日本ハム戦でも8回を完全に抑えた佐々木への感想を問われたダルビッシュは、今シーズン初勝利を挙げた日本時間18日のブレーブス戦後に苦笑しながらこう語っている。

「いやぁ、ホント、ヤバすぎるんじゃないですか。世界でナンバーワンの抑えピッチャーが、9イニング続けて投げているようなものですよ」

史上初「2試合連続完全試合」目前で…
佐々木の降板に賛否

 本拠地ZOZOマリンスタジアムで行われた日本ハム戦が、議論を呼び起こしたのも記憶に新しい。9回表の攻撃に入る直前に、ロッテの井口監督が佐々木の交代を球審に告げたからだ。

 ロッテ打線も日本ハムのエース上沢直之の前に7回を散発4安打でゼロ行進を続け、後を継いだ昨シーズンのリーグ最優秀セットアッパー、堀瑞輝の前に8回も得点を奪えていなかった。