中国のゼロコロナ固執で露呈した、「習近平国家主席は絶対正しい」の限界Photo:Lintao Zhang/gettyimages

中国は、最初に新型コロナウイルスが感染拡大した国だ。しかし、徹底した都市封鎖と行動制限の「ゼロコロナ政策」によって感染拡大を抑え込んだ(本連載第236回)。しかし、今、その政策が限界を迎えつつある。国民からの不満も爆発しているのに「ゼロコロナ」から脱却できない。権威主義的体制の根本的な問題は何か。(立命館大学政策科学部教授 上久保誠人)

一歩先を進んでいたはずの中国、世界から置きざりに?

 「ゼロコロナ」によって感染拡大を抑え込むことができた中国では、企業が、他国に先駆けて、生産を再開することができた。2020年、中国はG20の中で、唯一のプラス成長2.3%を達成している。中国政府は、「新型肺炎のまん延を最も包括的に、厳格に、徹底的に抑え込んだ」と自画自賛した。

 欧米諸国や日本など感染封じ込めに失敗したかにみえた自由民主主義諸国と対比して、中国の権威主義的な政治体制の優位性を強く主張し、「感染が広がる他の国に支援する用意がある」とアピールした(本連載第263回)。

 この成功体験から、中国政府は「『ゼロコロナ』こそが、ベストのコロナ対策」と訴え、新型コロナの徹底的な封じ込めを指示し続けた。
 
 ところが、その後新型コロナはアルファ株やデルタ株、オミクロン株など、次々と変異を繰り返したことで、世界の対応に変化が起きる。

 欧米諸国などは次々と「ゼロコロナ」の実現を放棄。新型コロナの消滅は不可能だという前提で、ワクチン開発・接種、治療薬の開発によって、ウイルスと共存・共生しながら社会を正常化していく方針に転換したのだ。