李家超李家超(ジョン・リー)・前香港特別行政区政務長官 Photo:EPA=時事

香港の政治トップである行政長官職。5月8日には、現在の林鄭月娥(キャリー・ラム)氏に代わる、新しい行政長官が誰になるかを決める選挙が行われる。候補者の立候補、選挙活動が例年よりも著しく遅れている中、最有力候補者が選挙用に作ったYouTubeアカウントがグーグルに削除されるという“事件”が起きた。(フリーライター ふるまいよしこ)

4月6日、立候補すらしていなかった人物が最有力候補に

「李家超氏が第6回特別行政区行政長官選挙の唯一の候補者である」

 4月6日に放たれたこの一言で、まだ立候補も表明していなかった李家超(ジョン・リー)・前香港特別行政区政務長官(行政長官に次ぐナンバー2)が、次の香港行政長官に就任することがほぼ決まった。発言者は中央政府駐香港連絡弁公室、つまり中国政府直属の香港出張所である。

 李氏はこれを受けて、その日の午後に林鄭月娥・行政長官に辞表を提出。夕方には記者会見を開き、「わたしの辞職願が中央政府によって受理されれば、行政長官選挙に立候補するつもりだ」と述べた。だが、この記者会見が、辞職したと言いながら李氏が政府の公式会見場を使って行ったことに疑問の声が上がった。現・行政長官の林鄭氏やその他高官たちのかつての立候補表明会見では必ず、それぞれが用意した別の場が使われていたからだ。これまで厳しく運用されてきた香港の公務員制度からするとあり得ない李氏のそれは、「もうこれまでの香港の常識は通用しない」ことを強烈に人々に印象づけた。