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オミクロン株の流行により、日本の約24倍ものスピードで感染者が増え続けている香港。公立病院のベッドはすでに完全にパンク、医療従事者たちは日々ギリギリの対応を迫られている。そんな状況下、香港政府のコロナ対策は遅れ、有効な手を打てずにいる。しかし2月16日、習近平国家主席の鶴の一声で、事態が転がるように動き始めた。(フリーライター ふるまいよしこ)

習近平の一声で、香港の新型コロナ対策が急に動き始めた

「香港政府はしっかりと全責任を負い、できるだけ早く新型コロナウイルスの感染拡大を抑え込むことを目下すべてに優先する任務とみなし、動員できるすべての力と資源を動員し、すべての必要な措置を取り、香港市民の生命の安全と健康を確保し、香港社会の大局的な安定を図らなければならない。中央の各政府省庁と地方政府は全力で香港特別行政区政府の感染対策措置を支持し、手助けする」

 2月16日、親中紙「大公報」の朝刊トップ1面に習近平国家主席のこのような言葉が掲載されたのをきっかけに、香港の新型コロナ措置の車輪が慌ただしく回り始めた。

 旧正月休暇が終わった2月初めから、香港では新規感染者数が顕著に増え始めた。14日の報告で2000人を突破し、17日には報告例は6000人を超え、3月3日には5万6000人を突破した。

日本で1日90万人ずつ患者が出ているのと同じペース

 オミクロンの感染の早さは周知のとおりだが、さすがに雪だるま式のこの増え方はただただ驚きである。香港の総人口は約750万人で、日本の16分の1だ。前述の数字を単純に16倍すると、日本で1日約90万人患者が出ているのとほぼ同様となる。

 感染者は30代が最も多いが、死亡者は2歳の子どもや11カ月の赤ん坊というショッキングなケースも報道されている。しかし圧倒的に多いのは高齢者だ。というのも、香港ではワクチン1本目を接種した人の数が、70代では70%に達しているものの、80代以上になると43%程度。その他年齢層では10歳未満を除き、ほぼ80~90%に達しているのに比べて極端に低いのだ。当然2本目、3本目となるとこの数は減る。

 また、政府衛生署の発表によると、第五波の死者(3月2日の時点で累計1153人)の9割がワクチン未接種者だといわれており、ワクチン接種を急ぎつつ、急速に拡大する感染の範囲をいかに抑えるかが急務になっている。

 香港政府はワクチン未接種者のショッピングモールや理髪店、飲食店の利用を原則的に禁止するという措置を取り始めた。だが、措置が発表された時点で各地の理髪店に長蛇の列ができたことからも、ワクチンを打たないと「心に決めた」人たちがどれほど多いかを改めて認識させられた。