NHK「プロフェッショナルの流儀」で紹介され話題沸騰! 1200年続く京都の伝統工芸・西陣織の織物(テキスタイル)が、ディオールやシャネル、エルメス、カルティエなど、世界の一流ブランドの店舗で、その内装に使われているのをご存じだろうか。衰退する西陣織マーケットに危機感を抱き、いち早く海外マーケットの開拓に成功した先駆者。それが西陣織の老舗「細尾」の12代目経営者・細尾真孝氏だ。その海外マーケット開拓の経緯は、ハーバードのケーススタディーとしても取り上げられるなど、いま世界から注目を集めている元ミュージシャンという異色の経営者。そんな細尾氏の初の著書『日本の美意識で世界初に挑む』がダイヤモンド社から発売された。閉塞する今の時代に、経営者やビジネスパーソンは何を拠り所にして、どう行動すればいいのか? 同書の中にはこれからの時代を切り拓くヒントが散りばめられている。同書のエッセンスを抜粋してお届けする。

いくつになっても若々しい感性を持つ人が実践する、たった1つのことPhoto: Adobe Stock

筋肉と同じように、美意識も鍛えられる

 フィットネスで筋肉を鍛えるのと同じで、美意識は鍛えられます。

 鍛えられますが、これも筋肉と同じで、鍛え続けていないと衰えます。そして感覚の世界、美意識の世界は、死ぬまで高みに上り詰められます。ただしその高みへと達するためには、経験によって、自分の固定観念を壊し続けなければいけません。

 美意識はどこまでも更新し続けることができる。そのことを身をもって証明したのが、デザイナーの石岡瑛子氏でした。

 二〇二〇年一一月から二〇二一年の二月にかけて、東京都現代美術館で、アートディレクター、デザイナーとして二〇世紀後半に多大な功績を残した石岡瑛子氏の展覧会が開催されていました。若者にも非常に人気で、連日長蛇の列ができていたほどです。

 石岡氏は、大学卒業後に資生堂に入社し、一九六六年のサマーキャンペーンの広告を手がけたことで一躍有名になります。独立後もパルコや角川書店など、数々の有名広告を生み出し、さらに八〇年代初頭には活動の場をニューヨークへと移しました。

 映画、オペラ、サーカス、演劇、ミュージック・ビデオなど、数々の分野で華々しい実績を残しました。受賞も数知れず、二〇〇八年の北京オリンピック開会式では衣装デザインを担当しています。

 石岡氏は、どうしてこれほどまでに、分野の垣根を越えて、華々しい仕事の数々を残すことができたのでしょうか。