NHK「プロフェッショナルの流儀」で紹介され話題沸騰! 1200年続く京都の伝統工芸・西陣織の織物(テキスタイル)が、ディオールやシャネル、エルメス、カルティエなど、世界の一流ブランドの店舗で、その内装に使われているのをご存じだろうか。衰退する西陣織マーケットに危機感を抱き、いち早く海外マーケットの開拓に成功した先駆者。それが西陣織の老舗「細尾」の12代目経営者・細尾真孝氏だ。その海外マーケット開拓の経緯は、ハーバードのケーススタディーとしても取り上げられるなど、いま世界から注目を集めている元ミュージシャンという異色の経営者。そんな細尾氏の初の著書『日本の美意識で世界初に挑む』がダイヤモンド社から発売された。閉塞する今の時代に、経営者やビジネスパーソンは何を拠り所にして、どう行動すればいいのか? 同書の中にはこれからの時代を切り拓くヒントが散りばめられている。同書のエッセンスを抜粋してお届けする。

美しいものを「鑑賞する人と創造する人」では、どちらが幸せになれるか?Photo: Adobe Stock

創造するほうが主観的幸福度が高い

 慶應義塾大学の教授で、「幸福学」の第一人者であり、心理学の専門家である前野隆司氏が面白いことを指摘されています。

 前野氏の学生だった大曽根悠子氏の研究によると、「音楽、絵画、ダンス、陶芸などの美しいものを鑑賞するよりも、それらを創造するほうが主観的幸福度が高い傾向がある」というのです(前野隆司『幸せのメカニズム 実践・幸福学入門』講談社現代新書、二〇一三年)。

 大曽根氏は、「美しいものを鑑賞するのが大好きだという学生」だったそうです。「アートや文化にあふれた社会にしたい。みんなを幸せにしたい」と考えた大曽根氏は、「人々はどんな種類の美しいものを見ると幸せになれるのかを調査したい」と考えました。

 絵画も音楽もダンスも経験があった前野氏は、それらを見るよりもやる方が圧倒的に幸せであることを知っていたため、大曽根氏にアドバイスをして、「大曽根さんが行なったアンケートには、鑑賞する場合だけでなく、創造する場合も加えることにした」そうです。