G7の首脳が「ロシアへのエネルギー依存から段階的に脱却する」という共同宣言を出した。日本も同調する方針だが、岸田文雄首相は、日本の政府や企業が出資するロシア極東の石油・天然ガス開発事業「サハリン1」「サハリン2」の権益を維持していく方針を示している。共同宣言に同調しながらも、サハリン権益を手放したくない「板挟み状態」の日本は、どんな対応を取るべきなのか。(立命館大学政策科学部教授 上久保誠人)
「禁輸措置」と「サハリン権益」の間で
板挟みになる日本
欧州連合(EU)は、ウクライナ侵略を続けるロシアへの追加制裁の一環として、ロシアからの石油輸入を段階的に停止または禁止することを協議している。
禁輸に難色を示しているハンガリーとスロバキア、チェコへの特別措置を盛り込んだ上で、年内に禁輸を決定する方針だ。その先には、天然ガスを含めた禁輸措置が議論される予定である。
主要7カ国(G7)首脳も、「ロシアのエネルギーへの依存状態から段階的に脱却する」という共同宣言を出した。G7のうち米国とカナダは、既にロシア産石油の禁輸措置に踏み切った。英国も、年内に石油輸入を打ち切ることを決めている。
日本も、この共同宣言に同調する方針だ。ただし岸田文雄首相は、エネルギー資源の大半を輸入に依存する日本の実態を踏まえて、「禁輸の時期は実態を踏まえ検討していく。時間をかけて段階的禁輸のステップを取っていく」と説明。国民生活への影響を考慮しながら順次進めると述べた。
また岸田首相は、日本の政府や企業が出資する、ロシア極東の石油・天然ガス開発事業「サハリン1」「サハリン2」の権益を維持していく方針を示している。
欧米主要国による禁輸措置は、ロシアにどんな影響を与えるのだろうか。また、共同宣言に同調しながらも、サハリン権益を手放したくない日本は、どんな対応を取るべきなのか。世界のエネルギー政策の歴史をひもときながら、その答えを探っていこう。