日銀の「不意打ち」リスクが高まる苦しい事情、円安・インフレ対応の苦難金融政策決定会合後の記者会見に臨む日本銀行の黒田東彦総裁(4月28日) Photo:JIJI

円安とインフレによって国民の不満が高まりつつある。事態がさらに悪化し、政府・与党が狼狽するような状況になれば、日本銀行による「不意打ち」の政策変更リスクが高まる。本来、中央銀行が想定外の動きをすることは悪手だが、日銀にはそうせざるを得ない状況に追い込まれかねない苦しい事情がある。(東短リサーチ代表取締役社長 加藤 出)

日銀は事実上の
「円安誘導」継続宣言

 物価上昇に対する国民の悲鳴が高まってきている。5月20日(金)に発表される4月のコアCPI(生鮮食品を除く消費者物価指数)前年比が政府・日本銀行の目標である2%に達すれば、「これ以上の円安およびインフレを止めるため、日銀は金融政策を修正すべきだ」という世論が一層強まると予想される。

 しかしながら黒田東彦総裁率いる日銀にその気は全くない。むしろ真逆で、事実上さらなる円安、さらなる物価高を彼らは目指している。

 4月末の金融政策決定会合で日銀は、10年国債金利を0.25%以下に抑えるYCC(イールドカーブ・コントロール)政策を今後も継続し、そのための「指値オペ」を原則毎日実施していくと発表した。これは「円安誘導継続宣言」といえる。

 しかし、事態がさらに悪化した場合、日銀が不意打ちでYCC政策の終了を突如決定するリスクが先行きある。中央銀行が想定外の動きをすることは悪手だが、日銀にはそうせざるを得ない状況に追い込まれかねない苦しい事情があるからだ。