1ドル=129円台にまで一時上昇したドル円レート。ドル以外の通貨に対しても円は下落しており、独歩安の様相を呈しているが、日本銀行は金融緩和継続の姿勢を崩していない。たとえ、日銀が利上げしても現在の円安を止めることは難しいだろう。(SMBC日興証券 チーフ為替・外債ストラテジスト 野地 慎)
金融緩和継続の姿勢を
変えない日本銀行
3月末に125円台まで急騰し、その後、いったん落ち着いたドル円相場だったが、FOMC(米連邦公開市場委員会)のメンバーによるタカ派的な発言が相次ぐなかで、米国10年債利回りが3%に向けて上昇すると、125円レベルをあっさりと上抜き、130円付近まで上昇してしまった。
ECB(欧州中央銀行)でも年内利上げを示唆する声が強まるなか、ユーロ円も140円近くまで値を上げており、正に円が独歩安となる様相だ。
海外の多くの中央銀行が利上げに向かうなかで、日本だけが金融緩和政策を継続することが円安の最大のよりどころとされ、他方、円安が我が国の家計の購買力を大きく損なうと思惑の高まりから、日銀は金融緩和政策を見直し、「悪い円安」を阻止すべきであるとの声が強まってきた。
このようななか、日銀の黒田東彦総裁が「円安は、日本経済にとってプラスの効果の方が大きい」という姿勢を崩さず、日銀も特定の利回りで国債を無制限に一定期間買い入れる「連続指し値オペ」をオファーし続けることから、一層日銀に対する風当たりが強くなっているのだが、日銀は「悪い円安」阻止のために本当に利上げを行うべきなのだろうか。
日銀が利上げしても、円安の進行を食い止めることはできないと考えている。その理由を次ページから挙げていく。