楽天モバイルには
解約されても困らないユーザー層がいる

 さて、これまで楽天モバイルで利用料が0円になるのは1カ月のデータ利用量が1GB未満のユーザーでした。楽天は無料ユーザー数を数字としては公表していませんが、世の中全体の約2割弱程度のユーザーが、この範囲に入るといわれています。

 私は経済評論家として、身近な数字をきちんと記録する習慣があります。家族のスマホデータ量も記録しているのですが、わが家の場合、この1GB未満条件に合致するのは高齢の両親です。普通にテレビを見ながらたまにスマホも使って生活する世代なのでデータ量は多くはない。こうした層が今回の「0円廃止」をきっかけにたとえ解約したとしても、楽天グループにとっての打撃は大きくない可能性があります。なにしろ他のスマホサービスもそれほど使わないわけですから。

 もう一つ、楽天モバイルを解約しそうなのがサブ端末として楽天モバイルを使っていたユーザー層でしょう。営業用とかLINEの裏アカウント用の端末として維持費0円ならちょうどいいと思っていたけれども、それが980円(税前、以下同じ)となると「もういらないや」と手放してしまう層です。これも、楽天にとっては解約の打撃が少ないでしょう。

 その観点で言えば、コストだけかかって収益が0円のユーザーを切り捨てるプラン変更は、楽天グループ全体の収益を上げる要素になるはず。その意味で瞬間的に発表翌営業日の株価が少し上がったのだと思われます。

 しかし、投資家は楽天グループの問題点の方を多く意識した様子です。楽天グループは携帯ビジネス参入後、恒常的に営業赤字が続いています。3つの柱で比較するとインターネットサービスと金融セグメントが好調でも、モバイルセグメントの赤字がそれを打ち消す構造です。

 そして投資家が注目しているのは「2023年度中にモバイルセグメントが計画通り、単月黒字化できるかどうか」です。足元の2022年第1四半期のモバイルセグメントが1350億円の赤字と赤字幅が相変わらず大きいところが懸念な点で、0円の廃止でここからどう盛り返せるのかが、予測の一つのポイントです。