イーロン・マスクによるツイッター買収の全貌を描いた衝撃のノンフィクション『Breaking Twitter イーロン・マスク 史上最悪の企業買収』(ベン・メズリック著、井口耕二訳)が話題だ。本書には、マスクとツイッター社の壮絶な攻防と理想の衝突が、克明かつ臨場感たっぷりに描かれている。「生々しくて面白い」「想像以上にエグい」「一気に読んだ」などの絶賛の声も多い。本記事では、「ツイッターブルー」を特別な人に付くマークからサブスクサービスへと変更した際の大失敗エピソードについて本書を引用しながら紹介する。(構成/小川晶子)

特別な人に付くマークから、サブスクへ
「ツイッターブルー」とは、月額料金を支払って審査を経ることで承認済みの青いマークが付き、さまざまな機能が使えるようになるサービスだ。一定時間ツイートを編集できたり、長文を投稿できたりする。
日本では2023年1月11日から提供開始となった。
私もわりとすぐに申し込み、現在のXアカウントに青いマークが付いている。
だが、以前はこれほど簡単に青いマークが付くわけではなかったことを覚えている人は多いだろう。
青いマークが付いているのは発信力のある有名人や企業の公式アカウントのみだったので、マーク付きのアカウントが発信する情報は信用度が高かった。だから「自分もあのマークが欲しい」という人がたくさんいた。
なぜ「ツイッターブルー」はサブスクになったのか?
ツイッターを買収したイーロン・マスクにとって、これはどうしてもやりたい施策だったのだ。
イーロン・マスクが求めた「平等性」
イーロン・マスクは「言論の自由」をおびやかすものはできる限り排除すべきだと考えていた。
「人類の文明を長続きさせる」ミッションで動いているマスクにとって、「言論の自由」はなくてはならないものだ。
主流の意見に反するものを見えないようにしたり、アカウント凍結や削除によって抑圧しようとしたりするのはありえない。
だが、広告主の存在が大きいかぎり、広告主の意にそぐわない投稿が抑圧される方向に力が働いてしまう(それに、広告主に頭を下げるスタイルも気に入らない)。
そこで、広告主からの収入に頼っていたツイッターを、ユーザーからの収入によって支えるようにしたいと思ったのだ。
特定の人に、特別に認証マークを与えるよりも、料金を払う人に与えるほうが公平性もある。
こうしたマスクの主張は、納得できるものだと感じる。
――『Breaking Twitter イーロン・マスク 史上最悪の企業買収』より