リスクヘッジができていれば
リバースモーゲージ活用は「アリ」だが…

 Rさんはリバースモーゲージのリスク、金利上昇による利息負担の増加、担保価値の下落などを理解しています。

 リバースモーゲージに関しては、担保価値を厳しく審査され、担保評価に対する融資額も厳しめであることから、よほどのことがない限りは、担保不動産を処分することで債務は相殺できるといわれています。

 Rさんは最悪の場合も想定し、米国不動産の売却も考えているので、リバースモーゲージのリスクに対しては過度に心配する必要はないと思います。

 相談文に記載のあるデータから、リバースモーゲージを活用したRさんの資金プランを試算すると、リタイア後もキャッシュフローが黒字になるのは先述の通りです。

 突発的な出来事が起きなければ、まとまった資金を金融資産から取り崩す心配がないことから、プランに大きな瑕疵(かし)があるようには見えません。このまま進めても、大丈夫だと思われます。

 ですが、気になる点もあります。それはやはり、保有金融資産額の少なさです。繰り返しになりますが、相談文に記載がある現金と株式を合わせて1000万円しかないのは不安です。

 にもかかわらず、Rさんご夫婦は年齢(Rさん70歳、奥さま66歳)から考えると収入、支出ともにかなり高額です。

 Rさん世帯もそうなるとは断言できませんが、筆者の経験上、現役時代から収入、支出が高額な人は、年を重ねてもその癖がなかなか抜けないことがあります。

 Rさん世帯には子どもがいないため資産を残す必要はなく、ご夫婦で使い切ってしまっても何ら問題がないのは確かです。ただし、前述した親族の体調不良のような突発的な出来事が退職後に起きた場合、1000万円の金融資産は急減する可能性があります。

注力すべきはむしろ
在職中の資産形成だ

 生命保険の加入について記載がないのも気掛かりです。死亡保障よりも、Rさんご夫婦の医療保障の有無が気になります。多額の金融資産を保有していれば、医療費等の支払いは金融資産でカバーできますが、金融資産が少ない場合は保険でカバーする必要が出てくるからです。

 Rさんは金融資産が少ない一方、世帯収入は多いため、医療費は75歳以上になっても3割負担でしょう。Rさんご夫婦や義母に何かあった場合の医療費負担に備えて、生命保険に未加入の場合は契約を検討すべきです。

 Rさんご夫婦の今後を考えると、現役中からこうした事態を想定し、金融資産の残高を積み増すなど、対策をしておくと安心感が高まるはずです。

 筆者の勘ぐりすぎであれば、積み増した分は心配ないと思った時点で使っていただいて構いません。また、もしRさんが先に亡くなった場合に奥様へ残す資産にもなります。

 Rさんが何歳まで働くかは分かりませんが、離職に伴うリバースモーゲージ活用に関しては心配いらないでしょう。

 ただし、働いている間は今の生活ペースを守りながら(過度な節約に励む必要はありません)、できる範囲で貯蓄を行い、金融資産の残高を増やしておいてほしいと思います。