「うまい棒」やビール、パンやうどんも…
値上げはまだ初期段階

 穀物などの価格は、さらに上昇する可能性が高い。特に、ウクライナ危機の影響は大きい。ウクライナでは穀倉地帯が空襲を受け、農地や倉庫に被害が出た。黒海海域には機雷が漂流し、船舶の航行が停滞。船舶戦争保険の値上げで海運コストも上昇している。

 ロシアが欧州の航空会社の領空飛行を禁止したことも供給制約を深刻化させている。航空各社は代替航路をとらなければならず、空運コストは増えている。それによって例えば、ノルウェーからわが国が輸入するサーモンが値上がりしてもいる。

 また、異常気象の影響で洪水や熱波が増え、農作物の育成や収穫、輸送に支障が出る確率も高まっている。植物由来の油の需給がひっ迫したことで、バイオ燃料の価格が上昇し、天然ガスや原油の価格にも追加的な押し上げ圧力が加わりやすい。

 加えて、中国・共産党政権がゼロコロナで大きく傷ついた社会と経済の安定のために、食糧備蓄の積み増しを進めている。この影響で、その他の国も小麦をはじめ食糧の確保を急がなければならない。世界全体で食糧の争奪が熾烈化するだろう。

 そうした事態は、わが国の家計にとって大打撃だ。ロングセラーのスナック菓子、「うまい棒」が42年の歴史で初の値上げに踏み切ったことは大きな話題となった。また、ビールや飲料の容器に使われるアルミニウムや樹脂の価格上昇によって、アサヒビールやサントリー食品インターナショナルも値上げに踏み切るという。

 他方、わが国が輸入する米国とカナダ、オーストラリア産の小麦価格も上昇している。これによりパンやうどんなどの価格も追加的に引き上げられる可能性が高い。国内企業の対応を見ていると、「国内需要が弱いため、極力、値上げは避けたい」との考えが多く、値上げはまだ初期段階にあると考えられる。

 世界的な価格上昇によって、日常生活に欠かせないモノやサービスを中心に、わが国の物価はさらに上昇するだろう。一風変わった例としては、ロシアが主要生産国であるパラジウムの価格高騰によって、銀歯が値上がりし、患者の負担が増えているそうだ。