鍾路3街駅韓国・ソウルの鍾路3街駅 Photo:PIXTA

朝のラッシュアワー時に障がい者団体がデモを行い、ソウルの地下鉄でホームや停車車内で車いすを降りて抗議活動を行ったことが物議を醸した。韓国では5月10日に尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が就任、新体制がスタートしている。これまで文在寅(ムン・ジェイン)政権下で庇護されてきた市民団体は、これからどうなるのだろうか。(韓国在住ライター 田中美蘭)

 今、韓国で、ある団体によるデモが大きな波紋を呼んでいる。文政権下ではしばしば、複数の市民団体や組織が不法的なデモを行っていた。彼らは「権利」を主張し、「弱者の味方」ということを強調しながらも、その実情は過激な言動で社会生活を乱しているともみられていた。文在寅前大統領が退任した今、「負の遺産」になりつつある市民団体はどこに向かうのであろうか?

朝の通勤ラッシュ時に、ソウル地下鉄を占拠
車いすを降り、電車内やホームをはって進む

 4月20日は韓国では「障がい者の日」である。障がい者に対する理解を深め、差別のない社会を目指すことを目的としている。その4月20~21日の2日にわたり、「全国障がい者差別撤廃連合」(以下、全障連)が、ソウルでデモを行った。

 問題はそのデモのやり方だ。彼らは間もなく大統領に就任する尹錫悦氏による障がい者の「移動権」の保障と関連予算の増額が「不十分であり、納得できる内容ではない」と主張し、「乗車デモ」と称して抗議活動を行った。

 団体がデモに選んだ場所は、ソウル地下鉄でも利用者が特に多い2号線と3号線。参加者たちは車いすを降り、駅のホームや停車中の電車をはって移動するなどのパフォーマンスを行ったのだ。しかも、時間は朝の通勤ラッシュの時間帯。当然、地下鉄の運行時間には遅れが生じ、利用者に大きな混乱が生じたのである。

 結局、デモは強行されSNSには、デモの時の様子や、車内や駅構内に貼られた大量のステッカーが多数上げられた。ネットでは「デモの参加者を罰するべきである」「混乱を与えて、自分たちの主張を押し通そうとする姿勢に嫌悪を感じる」「公共のものを汚すとは許せない」など、否定的な意見が目立つ。