韓国・最大野党「国民の力」の尹錫悦氏韓国・最大野党「国民の力」の尹錫悦氏 Photo:Pool/gettyimages

5月11日から、韓国は新しい大統領が就任し、新体制が始まる。現政権が北朝鮮と親しく、日本に対しては戦後最も厳しい態度を取っていたのに対し、新体制では外交政策が大きく変わる見込みだ。新大統領の選挙対策本部で活躍していた筆者が解説する。(NK知識人連帯代表、脱北者 金興光)

韓国の選挙史上初めて、政党内で脱北者選挙本部が活用された

 韓国の第20代大統領選挙は、票差0.75%の薄氷の勝利という選挙結果だけでなく、いろいろな側面から、今までの大統領選挙とは、かなり違う様相を見せてくれた。

 脱北者の私が見るに、この選挙の大きな特徴の一つは、韓国の選挙の歴史上初めて、政党内に脱北者選挙本部が設置され活用されたことにある。

 最大野党「国民の力」尹錫悦(ユン・ソクヨル)候補の選挙対策本部内には、脱北民キャンプ(編注:部署、事務所を指す)が公式に設置され、私自身もその重役を担当した。そのため、選挙対策本部で共有し討論された尹氏の外交・対北朝鮮関連政策の公約に対し、詳しく知るようになった。

 特に日韓関係に関しては、文在寅(ムン・ジェイン)政府の「竹槍歌」(編注:竹槍は19世紀末の東学党の乱の象徴。抗日義兵の歌や強い反日感情を意味する)一辺倒な対立とはまったく異なる。北朝鮮の核に対して一致団結し、戦略的な協力関係を築いて新しく発展させようという未来志向的な構想で、その綿密な計画を心から支持した。

 尹氏は選挙に勝った後、岸田首相と電話会談をして、日韓関係改善のために互いに協力することに同意し、未来に向けた希望のあいさつを交わした。今後は絡んだ問題の糸をどこからどう解いていくのかが重要だ。