世界の不確定要素が当面解消されないまま
確かなのはインフレがさらに進むこと

 今後、世界経済を取り巻く不確定要素が解消されない状況は続くだろう。まず、ウクライナ危機がどのように変化するかが見通しづらい。一方、スウェーデンとフィンランドがNATO加盟を表明するなど、世界情勢は混とんとしている。

 中国に対抗するため、米国は新しい経済枠組みである「インド太平洋経済枠組み」(IPEF:Indo-Pacific Economic Framework)の立ち上げを表明した。米国では11月の中間選挙が近づく中で、半導体などの先端分野を中心に対中強硬姿勢を強化する可能性が高い。

 中国による台湾侵攻の懸念を示す安全保障の専門家も多い。また、欧州委員会と米国はロシアへの制裁を強化する可能性が高い。それによって、欧州では原油や天然ガスの不足が深刻化し、世界のエネルギー資源や電力料金、肥料、穀物などの需給がさらに逼迫する恐れもある。

 対ロシア政策を巡ってドイツではショルツ政権の対応の遅れに批判が増えている。中国では共産党政権がどのように不動産バブル崩壊の深刻化を食い止め、ゼロコロナからウィズコロナの経済と社会運営を目指すか不透明だ。

 こうした状況下、確かにいえるのは、世界のインフレがさらに進むことだ。かなりの期間にわたって、物価上昇圧力が高まるだろう。

 原油価格の上昇によって塩化ビニール樹脂など基礎資材の価格が値上がりしている。米国では旅行などコロナ禍によって抑圧されてきた需要が顕在化している。賃金の上昇も勢いづいている。他方、一部の新興国では、食糧危機が発生している。

 物価のさらなる高騰を食い止めるために、欧米の中央銀行は、より強力なインフレ対策を実施せざるを得ない。それによって、世界全体で金利が上昇する。他方、世界の株価上昇を支えたGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)など先端企業の成長期待は鈍化している。当面、金融市場の不安定な展開は続くだろう。