100ドル紙幣写真はイメージです Photo:PIXTA

米FRBは、物価上昇は一時的とする見方が誤っていたことを認め、インフレ退治に必死。6月と7月には追加利上げが実施される方針だ。世界的な株価高騰を支えた超低金利と過剰流動性の解消が同時に進む。それはいまだかつて世界の投資家が経験していないことだ。(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)

世界恐慌の1932年以来
90年ぶりの下落記録

 5月20日までの1週間で、ニューヨークダウ工業株30種平均株価インデックス(NYダウ)は2.90%下落し、8週続落した。世界恐慌のさなかにあった1932年以来、90年ぶりの下落記録だ。5月20日までの年初来で見ると、NYダウは14.0%下落した。同じ期間、IT先端銘柄が多く組み入れられているナスダック総合指数の下落率は27.4%と大きい。

 株価が下落基調で推移した背景には、米国をはじめ株価が割高であることが大きく影響している。それに加えて、コロナ禍やウクライナ危機などによって世界の経済状況も急激に変化している。

 今後の展開として、世界経済の不確定要素は解消されない状況が続くだろう。主要投資家が急激な環境の変化に慣れるには時間がかかりそうだ。一方で、世界全体で物価はさらに上昇する可能性が高い。となると、米FRBをはじめ多くの中央銀行がより強力なインフレ退治のための策を打たなければならなくなる。

 追加利上げなど金融引き締めを目指さなければならなくなる中央銀行が増えることで、世界的に金利は上昇するだろう。金利上昇は株価にマイナスだ。当面、世界全体で金融市場は不安定な状況が続きそうだ。