【ワークマン仕掛け人・内部事情生告白】
どっちが勝つ？「しない経営」vs「する経営」！
ワークマンとカインズが同じ1兆円グループなのに、真逆のスタイルで絶好調な理由

今、最も注目を集める急成長企業ワークマン。「高機能・低価格」という4000億円の空白市場を開拓し、“頑張らない経営”で10期連続最高益。「＃ワークマン女子」も大人気。テレビでも大きく特集され続けている。
そんななか、急成長の仕掛け人・ワークマンの土屋哲雄専務の経営理論とノウハウがすべて詰め込まれた白熱の処女作『ワークマン式「しない経営」――4000億円の空白市場を切り拓いた秘密』も増刷を重ねている。経営学の論客も次々絶賛。
「めちゃめちゃ面白い！ 頑張らないワークマンは驚異の脱力系企業だ」（早大・入山章栄教授）
「ワークマンの戦略は世紀の傑作。これほどしびれる戦略はない」（一橋大・楠木建教授）
「『ユニクロ』にも『しまむら』にもない勝ちパターンを発見した」（早大・内田和成教授）
「縄文×弥生のイノベーションは実に読みごたえがある」（BCGシニアアドバイザー・御立尚資氏）
なぜ、今、「しない経営」が最強なのか？
スタープレーヤーを不要とする「100年の競争優位を築く経営」とは何か。
ワークマン急成長の仕掛け人による、限定特別講義をお届けしよう。

シナジー効果が働くケース、全く働かないケース

　以前在籍した総合商社では、「総合」の旗印のもと「シナジー経営」を標榜していた。

　実はこれが悩みのタネであった。

　ある時、社長が「シナジー経営強化」を打ち出すと、報告用の成果を「創り出す」のが大変だった。

　モトモトないものを強化するわけだから当然だ。

　他の事業部や子会社からモノになりそうもない案件や人材を山のように紹介され、ムダな時間を使い残業した。

　それでもサラリーマンだから立派な報告書を書いた。

　本当にシナジーがあるなら、社長に言われなくても動いている。

　総合商社は、各事業部を「××資源」「××フード」「××ケミカル」など分離独立させたほうが時価総額は増えるはずだ。

　大企業の事業部間のシナジーは、株式市場では「コングロマリット・ディスカウント（多角的企業を行う企業を相対的に低く評価する現象のこと）」とみなされることが多い。

　一般に本業からの距離が近い下記1.はシナジーが出やすい。

　逆に距離がある2.は経営力/資金力/販売力があり余っていないと成功しないといわれる。

1.本業と補完関係のある「隣接地」型
例）金型商社が取引先の金型メーカーを買収

2.本業と補完関係が希薄な「飛び地」型
例）自動車と住宅

　2.の典型は総合商社だ。

　私がいた頃の総合商社では、「資源部門」が大きく稼ぎ、それ以外の事業部はほぼ足を引っ張っていた。

　資源部門は絶好調でも、他事業への波及効果が少ない。

　この点、ワークマンが所属する「ベイシアグループ」は潔いのかもしれない。

　なぜか？