1兆円ベイシアグループはシナジーなしと言い切る
たった1つの理由

 同じ小売といっても、お客様が週2回来店されるベイシアと、ワークマンの一般客の年4回では来店頻度が違う。

 ワークマンは製品入替時の年4回だけ、製品告知のためにチラシをまく。

 ワークマンはPB製品が6割以上で、販売も加盟店に任せているので小売というよりメーカーに近い。

 ベイシアはスーパーなので常に競合がある。ワークマンのように基本方針と標準化だけでは戦えない。

 局地戦への準備や、ここぞというときに攻め入る反射神経も重要だ。

 ワークマンは1年前に企画した新製品を年4回だけ投入し、製品寿命は5年なので長期戦が基本だ。

 ベイシアやカインズは商品をケース単位で店舗に出荷する。

 ワークマンは衣料品を1枚単位で加盟店に届けている。

 来店頻度、競合環境、製品開発サイクル、販促、倉庫運営などすべてがまるで違う。

 つまり業態が違うので事業上のシナジーが少ないのだ。

 ただ、事業上のシナジーはないといっても、尖った成功事例やノウハウを各社の要望に応じて共有し合っている。

 各社の経営企画部を通じて要請すると、グループなので懇切丁寧に教えてくれる。

 自社で成功したノウハウを他社に教えられるのはグループ内で「名誉」という認識がある。

ワークマンはすべてカインズから学んだ

 実は、ワークマンの発展は、すべてカインズからヒントを得ている。

 ワークマンの発展のきっかけは、次のようにすべてカインズから教わったものなのだ。

◎1.カインズの新業態「Style Factory」店を参考にしてWORKMAN Plusを出店
◎2.カインズの「Style Book」発行の衝撃で製品のスタイリッシュ化を進展
◎3.カインズのインフルエンサー販促を見てアンバサダーマーケティングを考案

 また、ワークマンがITベンダーや情報システム会社を通さず、ユーザー部門だけでプログラミングが不要な新データ分析基盤をアマゾンAWS上でつくり始めたのは、先行していたベイシアとの情報交換会がキッカケだった。

 私はグループ内で各社が地味にオンデマンド型でノウハウを教え合っていることが、グループ売上の1兆円超えの影の原動力だと思っている。

 少なくともワークマンは、グループのノウハウを謙虚に吸収して成長してきたのだ。