真逆のカインズとワークマンが
なぜ、同グループなのか?
グループシナジーを全否定して、各社が独自に「尖る」方針だからだ。
ベイシアグループは好業績の総合スーパー「ベイシア」から、作業服とアウトドアウェアで圧倒的に強い「ワークマン」、ホームセンター1位の「カインズ」などが独立して成長し続ける売上高1兆円超えの企業グループだ。
この規模でグループシナジーを標榜しないで、独自に突出して戦えといっているグループはほとんどない。
その象徴として、グループ会報誌「ハリネズミ」がある。
この会報誌は「各社が独自性を磨き、個社を尖らせるための新たなグループ文化の醸成」を目標にしている。
事業上、グループ間のシナジーを全く期待しないで、各社は「孤高のハリネズミ」として各業態のトップを目指し、自力で奮闘すべきということだ。
おもいっきり突き放しているようだが、その通りだ。
実態のないものに頼っては、かえって道を誤る。
ところで、同じグループでも、拙著『ワークマン式「しない経営」』で紹介したように、隙間市場でダントツNo.1を目指すワークマンの企業文化とカインズは「真逆」の関係だ。
どっちが勝つ?「する経営」vs「しない経営」
対象分野が広いカインズはなんでも「する経営」で、チャレンジ精神に富む会社だ。
東急ハンズ買収、プロ経営者招聘、ベンチャー企業へ投資など、ワークマンでは絶対しないことをおもいっきりやっている。
時間と広がりを買っているのだ。
ワークマンは、作業服とアウトドアウェアという狭い市場を愚直に深掘りする。
「しない経営」で余計なことをせず、経営資源をニッチ(隙間)市場に集中投下する。
広げると絶対負けるからだ。
ワークマンが内部で人材教育する理由
ワークマンはこの企業文化と社員のDNAを最重視し、M&Aや外部人材に頼らないオーガニックな成長で「100年の競争優位」を目指している。
ワークマンでは、社内人材の限界が会社の成長の限界になっても仕方ないと考えている。
その代わり、ガシガシ人を教育する。
データ活用教育は私の入社直後から始まり、もう10年間、続いている。
そもそも100年の競争優位が目標なので10年というスパンはまだ短い。
人材が足りなかったら外部からヘッドハンティングするのではなく、時間をかけて教育をするのだ。
講師も内部の社員で、外部に頼らない。
一番重要な仕事だからだ。
外部人材に依存しない普通の人だけの経営で「100年の競争優位」を目指している。
100年というとウソっぽく責任放棄のようにも聞こえるが、ワークマンは本業の作業服では41年間、圧倒的な競争優位を築いている。
市場規模は小さな隙間業界だが、確固とした実績がある。
ベイシアグループは1兆円グループだが「シナジーはない」と言い切るたった1つの理由は、ワークマンもカインズも「ベイシアから分離したほうがうまくいく」という経営判断で独立したことに由来する。
これはどういうことか?