同じく改訂に盛り込まれた、教育現場の高速通信環境の整備を目的とするICTの活用は「個別最適化され、創造性を育む教育」を掲げる「GIGA(Global and Innovation Gateway for All)スクール構想」へと実践で展開され、端末一人1台を持って行う「ICT教育」とも呼ばれるようになった。

 当初、端末は2023年度までに小中学生全員へ配布されることが目標だったが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で諸連絡や授業のオンライン化が急務となり、2021年度には全国の小中学生のほぼ全員に情報端末が配布されたのだった。

私立小学校に大きな変化
ICTの活用で広がる児童の可能性とは?

「“デジタルネイティブ”と呼ばれる今の子どもたちは、パソコンやスマホ、家電に至るまであらゆることで情報ネットワークとつながっています。むしろICTの活用と言われ戸惑っているのは大人のほうで、子どもたちは授業で用意したカリキュラムを直感的にクリアしていますよ」というのは、東京都中野区にある宝仙学園小学校の教諭でICT教育主任を務める吉金佳能氏だ。

 同校では学習指導要領の改訂以前の2015年から、STEAM教育(Science:科学、Technology:技術、Engineering:工学・ものづくり、Art:芸術・リベラルアーツ、Mathematics:数学を組み合わせた教育概念)に着目していた。校内でRoboクラブの立ち上げや、「プログラボ」というロボットプログラミングの私塾と提携した学びを進めるなど、ICT教育に力を入れてきた学校である。

 そんな環境でプログラミング教育の研究リーダーを務める教諭の山崎剛士氏は、国の教育指針が大きく変わった2000年以降についての変化を「子どもたちが自由に端末を使うことで、表現のアウトプットの仕方が増えたことが特徴的だ」と教えてくれた。

 教頭で図画工作の教科を担当する百瀬剛氏は、「プロジェクションマッピングや、パソコンでのお絵かきなど、これまではできなかった表現方法が子どもたちにとって魅力的で刺激にもなっている」という。「特に理科や図工はICTと親和性があり、授業のパフォーマンス向上もメリットかもしれません」と吉金氏は付け加える。

 もう一人の教頭の正路進氏は、「新しい教育システムの導入は教える側に慣れない部分があったかもしれませんが、子どもたちの反応もよく、有効活用が着実に広がっています」と語る。宝仙学園小学校では、ICTの活用が推進されることによるポジティブな変化が表れているようであった。

 私立の宝仙学園小学校の場合、教科ごとに担任が分かれ学習指導要領にも柔軟に対応したカリキュラム内容で授業が行われている。そのため、社会の変化を敏感に捉えた指導者の感度の高さと教育施設が学校に以前から備わっており、国の教育政策のほうが後追いしているといった特別感があるような印象を受けた。

「小学校の授業でiPad」は効果的?大変?私立・公立校の教員6人に実態を聞くラインをトレースしてロボットを走らせる授業。宝仙学園小学校のICT教育の考え方や取り組みは、学校のホームページにも詳しく書かれている