ソニー元CEO・出井伸之氏Photo:Koichi Kamoshida/gettyimages

ソニー元CEO・出井伸之氏は
変化に敏感な経営者だった

 ソニーの元CEO、出井伸之さんが亡くなりました。心よりご冥福をお祈り申し上げます。私たちの世代のビジネスパーソンに多大な影響を与えた経営者でした。そして、出井さんと言えばイノベーションの人でした。今回は出井さんと私の小さな接点から学んだことを、感謝の気持ちとともに書き記したいと思います。

 1995年、出井さんが社長に就任した当時、ソニーは日本一のエレクトロニクス企業として日本の若者の誰もが憧れる大企業でした。ところが、就任して2年後あたりに出井さんは「デジタルという隕石が落ちてきて、これまでのエレクトロニクス企業は恐竜のように絶滅の危機を迎える」といった趣旨の警鐘を鳴らし始めます。

 その後、日本の名だたるエレクトロニクス企業が苦境に立ち、アップルやグーグルのようなアメリカの巨大IT企業と、サムスン、鴻海(ホンハイ)、ファーウェイやシャオミといったアジアや中国のエレクトロニクス企業との狭間で競争に敗れていくのです。その変化に一番早く気づいていた経営者でした。

 ソニー自身もソニーショックに巻き込まれていったことで、「出井さんの力も及ばなかった」と当時批判されたのを覚えていますが、それは二つの意味で間違いでした。