日本がウクライナの徹底抗戦を支持すべき理由、「妥協案」が招き得る末路とはPhoto:AM POOL/gettyimages

ロシアによるウクライナ侵攻が始まってから4カ月が経過したが、いまだに膠着(こうちゃく)状態が続いている。欧米諸国はこの状況を受け、武器供与などの支援を強化している。しかし、一方で欧米諸国は「ロシアが東部ウクライナを占拠したまま」での早期停戦を望んだり、「領土割譲の妥協案」を提案したりと、「力による一方的な現状変更」を暗に認めているような姿勢も見せている。だが日本はこれらの譲歩案を認め、中途半端な姿勢を示してはならない。その理由とは――。(立命館大学政策科学部教授 上久保誠人)

ウクライナ戦争は膠着状態
それぞれの思惑で動く欧米諸国

 ロシアがウクライナに軍事侵攻してから4カ月がたった。ロシアによるウクライナ東部への大規模な攻撃とウクライナの徹底抗戦で、戦況は膠着(こうちゃく)状態である。戦争の長期化は避けられない情勢で、さまざまな国が、それぞれの思惑で動いている。
  
 その中で、ボリス・ジョンソン英首相は6月中旬、ウクライナ軍に対する訓練プログラムを提供すると発表した。120日ごとに最大1万人のウクライナ兵を訓練する計画で、具体的には最前線で勝ち抜くためのスキル、基本的な医療訓練、サイバーセキュリティー、対爆発物戦術などを教えるという。

 また、ジョー・バイデン米大統領も6月中旬に、対艦ミサイルシステムやロケット弾、りゅう弾砲、砲弾など、ウクライナに対して総額10億ドルの武器を支援すると発表した。

 米国防総省も、高機動ロケット砲システム(HIMARS)4基、沿岸・河川巡視船18隻、数千発の砲弾など最大4億5000万ドルの追加軍事支援を行うことを明かしている。2月末の侵攻開始以降、バイデン政権のウクライナへの軍事支援は総額61億ドルに上る。

 さらに、エマニュエル・マクロン仏大統領、オーラフ・ショルツ独首相、マリオ・ドラギ伊首相は6月半ば、そろってキーウを訪問し、ゼレンスキー大統領と会談した。

 マクロン大統領は「勝利するまで欧州連合(EU)はあなたたちの味方だ」と述べ、「我々はウクライナを『加盟候補国』として速やかに認定することを支持する」と強調した。

 この5カ国は一様にウクライナを支持しているようにみえるかもしれないが、実は米英と仏独伊でスタンスは大きく異なる。

 要するに、米英がウクライナの徹底抗戦を支援している一方で、仏独伊は早期の停戦を何とか進めたいという立場である。なぜ、米英のスタンスは仏独伊と異なるのか。本連載でも過去に何度か触れてきたが、その背景には「経済面」「政治面」の2つの思惑がある(本連載第304回)。