6月10日、日本政府はコロナ禍で途絶えていた外国人観光客の受け入れを再開した。超円安が進行する中、インバウンド(訪日観光)が経済再生の切り札になるか注目されている。1961年から訪日旅行事業を始め、コロナ禍以前は年間約15万人の訪日客を取り扱っていた日本旅行の緒方葉子・訪日旅行営業部長にインバウンドツアーの最新事情を聞いた。(ダイヤモンド編集部 柳澤里佳)
インバウンド解禁でも実態は…
制約だらけツアー企画に悪戦苦闘
――6月10日からインバウンドの受け入れが再開しました。が、1日の入国者上限が2万人だったり、添乗員付きパッケージツアー限定だったり、制約もありますね。どんなツアーを企画して売り出しているのですか。
実は、制約はそれだけではないのです。観光庁が出した「外国人観光客の受け入れ対応に関するガイドライン」を満たさないといけないので、コロナ禍になる前とは「全く別物」のツアーをつくって売っている感じがします。
今回は「管理型」で、添乗員をツアーの全行程で付けます。いわゆるフリータイムがないのです。そうしたツアーが社内にあるのか、なければ既存ツアーからどのように変更していくか、変更するならその差額分をツアー代金に上乗せした見積もりを作り直します。
そして、そういったことを含めた日本の受け入れ状況をお客さまにご説明できるか、取引先である海外の旅行会社とやりとりしている真最中です。だからそんな簡単に、「さあどうぞ」とたくさんの外国人客を迎える状況ではありません。
そもそも観光ビザの登録ができるようになったのが6月10日なので、実際に観光ビザで来日した外国人はまだそう多くないです。ちまたでは外国人観光客を「見かけた」という声もありますが、現状は留学生ビザやビジネス渡航ビザで来日した人が、観光地にも行っているのではないでしょうか。
観光ビザ登録者数は徐々に増えていますが(編集部注:6月27日時点で約5000人)、実際に当社のお客さまが来日されるのは早くても7~8月になりそうです。
――なるほど……試行錯誤しているのですね。具体的なツアー内容としては、何日間でどんな方面に行くプランで、どんな変更をしているのですか。また、差額分の上乗せは、外国人観光客にとっては「超円安で相殺」されないのですか。