ジョン・ラスキンが至高の建築だと評した建物とは?
一八五一~五三年の著書『ヴェネツィアの石』の中で、ラスキンは歴史都市であるヴェネチアの各時代を代表する建築群を分析しています。
彼は、ゴシック様式こそ至高のものだと位置づけているのですが、その理由は、ゴシック様式には「精神の力と表現」があると言うのです。
ピラミッドやパルテノン神殿に象徴されるような、エジプトやギリシャの建物は、たしかに優れたものです。
しかしラスキンは、エジプトやギリシャの建物に、「支配者や上司に命じられた強制的な労働に基づく正確さ」を見て取ります。
一方、ゴシック様式の建築には、職人たちが自ら考え、手を動かした結果があります。それは「権威に抵抗し、自由な発想と企画でなされた創造的仕事」であり、そこには自主独立の精神が表現されているとラスキンは洞察しています(さらに詳しく知りたい方は、佐々木氏の『創造都市への挑戦』を参照ください)。