NHK「プロフェッショナルの流儀」で紹介され話題沸騰! 1200年続く京都の伝統工芸・西陣織の織物(テキスタイル)が、ディオールやシャネル、エルメス、カルティエなど、世界の一流ブランドの店舗で、その内装に使われているのをご存じだろうか。衰退する西陣織マーケットに危機感を抱き、いち早く海外マーケットの開拓に成功した先駆者。それが西陣織の老舗「細尾」の12代目経営者・細尾真孝氏だ。その海外マーケット開拓の経緯は、ハーバードのケーススタディーとしても取り上げられるなど、いま世界から注目を集めている元ミュージシャンという異色の経営者。そんな細尾氏の初の著書『日本の美意識で世界初に挑む』がダイヤモンド社から発売された。閉塞する今の時代に、経営者やビジネスパーソンは何を拠り所にして、どう行動すればいいのか? 同書の中にはこれからの時代を切り拓くヒントが散りばめられている。同書のエッセンスを抜粋してお届けする。
これからの働き方、暮らし方を考えるヒントが
「工芸」にはたくさん詰まっている
二〇二〇年から世界中で新型コロナウイルスが猛威をふるうなか、仕事も在宅勤務やリモートワークが増え、働き方も暮らし方も、一変してしまった方も多いと思います。
実はこれからの働き方、暮らし方を考えるためのヒントが「工芸」にはたくさん詰まっています。
働き方について考える際に参考になるのは、一九世紀イギリスで活躍した美術評論家で、社会思想家でもあったジョン・ラスキンの考え方です。
日本では文化経済学、創造都市論の専門家である経済学者、佐々木雅幸氏が紹介されています(『創造都市への挑戦』岩波現代文庫、二〇一二年)。以下、佐々木氏の紹介を元に、ラスキンの考えを私なりにまとめると、こうなります。
ラスキンは、物の価値は、消費者の生命を維持するだけでなく、人間性を高める力にあると主張します。そしてそのような本質的な価値を生み出すのは、人間の自由な創造的活動(opera(オペラ))であり、決して他人から強制された労働(labor(ラボール))ではないと考えます。