NHK「プロフェッショナルの流儀」で紹介され話題沸騰! 1200年続く京都の伝統工芸・西陣織の織物(テキスタイル)が、ディオールやシャネル、エルメス、カルティエなど、世界の一流ブランドの店舗で、その内装に使われているのをご存じだろうか。衰退する西陣織マーケットに危機感を抱き、いち早く海外マーケットの開拓に成功した先駆者。それが西陣織の老舗「細尾」の12代目経営者・細尾真孝氏だ。その海外マーケット開拓の経緯は、ハーバードのケーススタディーとしても取り上げられるなど、いま世界から注目を集めている元ミュージシャンという異色の経営者。そんな細尾氏の初の著書『日本の美意識で世界初に挑む』がダイヤモンド社から発売された。閉塞する今の時代に、経営者やビジネスパーソンは何を拠り所にして、どう行動すればいいのか? 同書の中にはこれからの時代を切り拓くヒントが散りばめられている。同書のエッセンスを抜粋してお届けする。

伝統工芸とテクノロジーの融合で、思いがけない成果につながる織物に触れると音が鳴るスピーカー Photo: 株式会社 細尾

一年後に京都で、社長をはじめ役員や一部メディアに向けて
発表するのが最終ゴール

 一年後に何らかの形にすべく、私たちGO ONとパナソニックとのセッションは毎月行なわれました。私たちは、パナソニックの中で家電をつくっているチームと協業していました。

 GO ONのメンバーのうち一人と、パナソニックが選抜したデザイナーのうちの一人が組んでセッションをする。それを毎月繰り返していきました。

 セッションをするうちに、成果を言葉や文章で表しても伝わりにくいので、物で表してみようということになりました。物によるコミュニケーションです。

 セッションの成果を製品化することは、あえて考えていませんでした。それを考えてしまうと、どうしても「ボールを置きに行ってしまう」ことになります。そこは放棄して、文字通りの実験を行なっていました。そんなラボでした。

 製品化は考えずに、何かの形にして、一年後に京都で、社長をはじめパナソニックの役員たちや一部のメディアに向けて発表する。それが最終ゴールでした。