NHK「プロフェッショナルの流儀」で紹介され話題沸騰! 1200年続く京都の伝統工芸・西陣織の織物(テキスタイル)が、ディオールやシャネル、エルメス、カルティエなど、世界の一流ブランドの店舗で、その内装に使われているのをご存じだろうか。衰退する西陣織マーケットに危機感を抱き、いち早く海外マーケットの開拓に成功した先駆者。それが西陣織の老舗「細尾」の12代目経営者・細尾真孝氏だ。その海外マーケット開拓の経緯は、ハーバードのケーススタディーとしても取り上げられるなど、いま世界から注目を集めている元ミュージシャンという異色の経営者。そんな細尾氏の初の著書『日本の美意識で世界初に挑む』がダイヤモンド社から発売された。閉塞する今の時代に、経営者やビジネスパーソンは何を拠り所にして、どう行動すればいいのか? 同書の中にはこれからの時代を切り拓くヒントが散りばめられている。同書のエッセンスを抜粋してお届けする。

すべての人は、消費者からクリエーターに変わることができるPhoto: Adobe Stock

どんな些細な行為でも、それを意識すれば
芸術的な行為へと変えることができる

すべての人間は芸術家である」という言葉を残したドイツのアーティスト、ヨーゼフ・ボイスは、「社会彫刻」という概念を提唱しています。

 ボイスは、芋の皮をむくといった些細な行為であっても、意識的な活動であるならば芸術活動であると主張しています。

 社会彫刻は、自らの一つひとつの行為を変えることで、未来のために社会を彫刻していこうという考え方です。

 だから「すべての人間は芸術家である」というボイスの言葉は、どんな些細な行為でも、それを意識して芸術的な行為へと変えることができる、という意味です。

 労働と消費、教育、政治、環境なども含め、人間のすべての活動は、芸術的なものへと変えることができます。その意味で、この世の中に美の山は無限に存在するのです。

 それこそ、ボイスの主張の真意なのです。ボイスのその考え方は、時代が大きく変わろうとしている現在、いっそう重要になっています。

 働くことは、今までは「指示されて行なう労働」だったかもしれませんが、工夫次第で、それを「創造性を発揮する仕事」へと変えることができます。