壁を超えたら人生で一番幸せな20年が待っていると説く『80歳の壁』が話題になっている今、ぜひ参考にしたいのが、元会社員で『島耕作』シリーズや『黄昏流星群』など数々のヒット作で悲喜こもごもの人生模様を描いてきた漫画家・弘兼憲史氏の著書『死ぬまで上機嫌。』(ダイヤモンド社)だ。弘兼氏のさまざまな経験・知見をもとに、死ぬまで上機嫌に人生を謳歌するコツを説いている。現役世代も、いずれ訪れる70代、80代を見据えて生きることは有益だ。コロナ禍で「いつ死んでもおかしくない」という状況を目の当たりにして、どのように「今を生きる」かは、世代を問わず、誰にとっても大事な課題なのだ。人生には悩みもあれば、不満もあるが、それでも人生を楽しむには“考え方のコツ”が要る。『死ぬまで上機嫌。』には、そのヒントが満載だ。
※本稿は、『死ぬまで上機嫌。』より一部を抜粋・編集したものです。

【漫画家・弘兼憲史が教える】<br />70代にとってのセックス作:弘兼憲史 「その日まで、いつもニコニコ、従わず」

「死ぬまでセックス」「死ぬほどセックス」

お互いに独り身で、好意を寄せ合っているとなると、友情から本格的な恋愛に発展する可能性もあるでしょう。そこで、気になるのがセックスの問題です。

『週刊現代』(講談社)や『週刊ポスト』(小学館)ではここ数年、毎号のように「死ぬまでセックス」「死ぬほどセックス」といった高齢者の性についての特集記事が掲載されてきました。対象読者の中心は、おそらく僕と同じ団塊の世代だと思われますが、いったいどんな目的で読んでいるのでしょうか。

実用目的なのか、それとも興味本位で楽しんでいるのか。まあ両方なのかもしれませんが、僕自身はセックス特集を実用目的で読むことはありません。同じ雑誌に自分の記事が掲載されることもあるので、パラパラと流し読みをする程度です。

高齢者だからこその性的関係

高齢者の場合、僕はいわゆるセックスをともなわない性的関係が成立すると考えています。二人きりで食事をしたり、ときには手をつないで海を見に行ったりすることも、十分に性的な関係だと思います。

手をつなぐ、添い寝をするなど、スキンシップを取るだけで性的な欲求は満たされます。若い世代には意味不明かもしれませんが、高齢者だからこそ到達できる境地といえます。

朝丘雪路さんが歌った『お別れしましょう』という名曲があります。これは、ひと言でいうと「セックスをしてしまうと苦しくなるから、何もしないで別れましょう」という歌です。今になって聴くと、なかなかいい歌だと思います。いかにも、作詞家・なかにし礼の面目躍如であり、とても気に入っています。

高齢者の恋は免疫力を高める!?

高齢者の恋は、こういうノリでいいんじゃないでしょうか。相手と触れあってドキドキする。それだけで、体の免疫力は高まるともいわれています。白血球の一つであるリンパ球には「ナチュラルキラー(NK)細胞」というものがあり、がん細胞やウイルス感染細胞を攻撃する役割を果たしているのだそうです。

恋愛を楽しむと、NK細胞が活性化し、免疫力が高まるという理屈です。ひょっとしたら新型コロナウイルスに対する免疫力だって高まるかもしれません。恋愛で健康になれるなら、むしろ恋をしないともったいないとさえいえます。

※本稿は、『死ぬまで上機嫌。』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。