壁を超えたら人生で一番幸せな20年が待っていると説く『80歳の壁』が話題になっている今、ぜひ参考にしたいのが、元会社員で『島耕作』シリーズや『黄昏流星群』など数々のヒット作で悲喜こもごもの人生模様を描いてきた漫画家・弘兼憲史氏の著書『死ぬまで上機嫌。』(ダイヤモンド社)だ。弘兼氏のさまざまな経験・知見をもとに、死ぬまで上機嫌に人生を謳歌するコツを説いている。現役世代も、いずれ訪れる70代、80代を見据えて生きることは有益だ。コロナ禍で「いつ死んでもおかしくない」という状況を目の当たりにして、どのように「今を生きる」かは、世代を問わず、誰にとっても大事な課題なのだ。人生には悩みもあれば、不満もあるが、それでも人生を楽しむには“考え方のコツ”が要る。『死ぬまで上機嫌。』には、そのヒントが満載だ。
※本稿は、『死ぬまで上機嫌。』より一部を抜粋・編集したものです。

【漫画家・弘兼憲史が教える】<br />片づけ上手になるたった1つの考え方作:弘兼憲史 「その日まで、いつもニコニコ、従わず」

片づけや掃除こそ男の仕事

夕方のニュース番組などを見ていると、高齢者が自宅にモノをため込み、ゴミ屋敷状態になっている様子がときどき報道されています。「こんな人もいるのか」と興味本位で見てしまう視聴者がたくさんいるのでしょうか。結構定番化しています。

ゴミ屋敷の主人は、たいてい一人暮らしの男性と相場が決まっています。長年、家事のすべてを妻に頼り切り、死別や離婚で一人暮らしになった結果、きちんと掃除ができず、気がつけばゴミ屋敷状態……という過程がなんとなく想像できてしまうのです。そもそも男性にはがさつなタイプも多く、「ちょっとくらい汚れても死にはしない」などといって、掃除や片づけを軽視する傾向があります。

確かに一度や二度掃除をしないくらいで死ぬわけではありませんが、ハウスダストやカビが健康に深刻な害を及ぼしかねません。僕自身はというと、独身時代から料理だけでなく、片づけも得意なほうでした。今でもこまめに自分で片づけしています。特に、仕事場の玄関の靴は、気がついたときにアシスタントの分まできちんと揃えるようにしています。ちょっとでも乱雑になっていると、どうしても気になってしまうのです。

料理と片づけを組み合わせるという発想

靴のつま先を外に向けて置き直すことを「出船に揃える」などと表現します。靴を海に出航できる状態の船に見立てているわけですね。出船に揃えるのは、いざというときに出陣できる武士道に由来するという説があります。あるいは、災害時にいち早く避難できるようにする実利性に基づくとする人もいます。

それ以上に、きちんと揃っている靴を見ているとすがすがしい気分になります。僕にとっては、このすがすがしさこそが最大の効用だと感じます。こんなふうに片づけをするときは、「いつ友人や知人が訪ねてきても、すがすがしい気分でいられるようにしておく」ことを意識しましょう。そうすれば、ちょっとしたスキマ時間に部屋を整理整頓したり、ホコリを拭き取ったりする意識が働くからです。汚らしい部屋を見られて品性を疑われるのは避けたいですからね。

料理と片づけや掃除を組み合わせるのも効率的です。鍋で味噌汁を温めている時間を活用してテーブルの上を片づけ、キッチンの床を拭くなど、料理の段取りにこまめな掃除を組み込むのです。そもそもキッチンが汚れていたら、その場所にいたくないという気持ちになるものです。また、冷蔵庫の中に詰め込み過ぎて食材の管理が行き届いておらず、なんだかヘンな臭いが漂っていたら、とりあえず簡単なインスタントラーメンで済まそうという発想になりかねません。せっかくの料理へのモチベーションも低下してしまいますから、必要な食材を取り出しやすくしておけば、料理もしやすくなるという好循環が生まれるのです。

※本稿は、『死ぬまで上機嫌。』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。