壁を超えたら人生で一番幸せな20年が待っていると説く『80歳の壁』が話題になっている今、ぜひ参考にしたいのが、元会社員で『島耕作』シリーズや『黄昏流星群』など数々のヒット作で悲喜こもごもの人生模様を描いてきた漫画家・弘兼憲史氏の著書『死ぬまで上機嫌。』(ダイヤモンド社)だ。弘兼氏のさまざまな経験・知見をもとに、死ぬまで上機嫌に人生を謳歌するコツを説いている。現役世代も、いずれ訪れる70代、80代を見据えて生きることは有益だ。コロナ禍で「いつ死んでもおかしくない」という状況を目の当たりにして、どのように「今を生きる」かは、世代を問わず、誰にとっても大事な課題なのだ。人生には悩みもあれば、不満もあるが、それでも人生を楽しむには“考え方のコツ”が要る。『死ぬまで上機嫌。』には、そのヒントが満載だ。
※本稿は、『死ぬまで上機嫌。』より一部を抜粋・編集したものです。

【漫画家・弘兼憲史が教える】ずっと続けてきたけれど70歳でキッパリやめたこと作:弘兼憲史 「その日まで、いつもニコニコ、従わず」

だんだん参加者が減っていく同窓会

同窓会は古くからの友人と会える貴重な機会です。一般的に、年を取るにつれて、同窓会を催す機会は増えていくようです。元気なうちにみんなで集まっておこうという意識が高まるのでしょう。

僕の母校である山口県岩国市の中高一貫校でも、しょっちゅう同窓会が開催されてきました。中高6年間の同窓生が全国から参加するので、会場も大きく、いつも60人くらいは集まっていたと思います。僕は毎回とはいわないまでも、時間が合えばなるべく参加していました。

おもしろいもので同窓会というのは、ある程度人生に成功した人間が参加しがちです。最初の頃は久しぶりに再会できた懐かしさが強く、昔話で盛り上がるのですが、回を重ねるごとに参加者が減っていきます。「お前は、どんな仕事をしているの?」「子どもは、何してるの?」。こういった質問に答えにくい人は、どうしても顔を出しにくくなるのです。

同窓会という集まりの正体

息子が一流企業に入社したはずなのに、急にドロップアウトしてミュージシャンを目指した挙げ句、今はどこで何をしているかわからない。こんな事情を抱えている人は、同窓会に来なくなります。借金を抱えてしまって、首が回らない人も同じです。

そんなこんなで、同窓会はしだいに経済的・社会的に成功した人の集まりと化していきます。いい換えれば、同窓会にやってくるのは幸せ度の高い人ばかり。ただし、70代にもなると、元気だった人たちにも衰えが目立つようになります。

持病を抱えている人、人工透析をしている人、がん治療をしている人の話も頻繁に聞きます。中には、自力で歩くのすらおぼつかなくなった人もいます。そうやって体が弱ってしまった人は、会場まで足を運ぶのが難しくなりますし、亡くなる人も増えていきます。

70歳を区切りに同窓会を生前整理

櫛の歯が抜けるように、同窓会は徐々に寂しい催しになっていくのです。もはや近況報告は、病気の話とか誰が死んだとかいう話で占められます。

70代になった今、同級生の死を知らされて寂しいと思いながらも、冷静に受け止められるようになりました。「明日は我が身」なのはわかっていますから、「ああ、あいつが先だったのか。中学のときはあんなに活発だったあいつが……」などと、しみじみ思うだけです。

そうやって、細々と同窓会を続けていくこともできるのでしょうが、辛気くさい思いをするのもイヤなので、みんなで話し合った結果、70歳を区切りに同窓会を終わりにしました。同窓会を生前整理したということです。

あとは、必要に応じてメールや電話で連絡をするくらい。いつかはメールもままならなくなり、徐々に自然消滅していくのでしょう。寂しいと思われるかもしれませんが、それでいいのです。

※本稿は、『死ぬまで上機嫌。』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。