選挙期間中の7月8日、安倍晋三元首相が応援演説中に銃撃されて亡くなった。これは許すことのできない蛮行である。そして、その直後に開催された第26回参議院選挙は、単独で63議席を獲得した自民党の大勝という結果に終わった。今回の結果について、「安倍元首相の弔い合戦」となり、自民党への同情票が集まったことが勝因だと分析する向きもあるだろう。だが、参院選の勝敗を分けたポイントはそれだけではなく、他に2つの要因がある。その詳細と、今後の政局の展望について詳しく解説する。(立命館大学政策科学部教授 上久保誠人)
自民党の勝因は
安倍元首相への「手向け」だけではない
7月10日に第26回参議院選挙が行われた。選挙期間中の7月8日には、安倍晋三元首相が応援演説中に銃撃されて亡くなった。心からお悔やみを申し上げたい。自由民主主義の根幹である選挙の期間中に起こった蛮行に対して、最大級の怒りを示したい。
投開票の結果、自民党、公明党の連立与党は、参院全体の過半数125議席を大きく超える146議席を獲得した(非改選も含む、以下同)。また、自公に日本維新の会、国民民主党を加えた憲法改正に前向きな「改憲勢力」が、改正の発議に必要な衆議院全体の3分の2を上回る179議席を占めた。
一方、立憲民主党は、選挙前から6議席減らして39議席にとどまった。日本維新の会は昨年の衆院選に続いて躍進し、改選前の15議席から21議席に増やした。比例では立憲民主党を上回った。
今回の結果について、「安倍元首相の弔い合戦」となり、自民党への同情票が集まったことが勝因だと分析する向きもあるだろう。
だが、参院選の勝敗を分けた要因はそれだけではない。「安全保障・憲法改正に対する左派野党の消極的姿勢」、「国内政策における『自民党の左傾化』」の2つの要因が重なり、今回の結果につながったのだ。
一体どういうことか。まずは一つ目の「安全保障・憲法改正に対する左派野党の消極的姿勢」について、背景を踏まえながら説明していこう。