ユーロ20年ぶり「パリティ割れ」、ユーロ高に反転するための欧米経済の条件Photo:PIXTA

為替市場の争点はユーロ安へ
ユーロ下落の4つの背景

 為替市場の焦点は、ドル高・円安からユーロ安にシフトし、ユーロドルのパリティ(1ユーロ=1ドル)を試す展開となった。7月14日には、ユーロドルが0.9952の安値を付け、パリティを明確に割り込み、02年12月以来の低水準となった。

 これまでのユーロドル相場の下落要因としては、
(1)米国がユーロ圏対比で相対的に金融政策正常化のペースが速く、米独金利差がユーロ(ドル)に対して不利(有利)に動いた(ドル高)
(2)ウクライナ問題をうけた天然ガス供給不安・価格高騰がユーロ圏経済に悪影響を及ぼすとの懸念
(3)高インフレ、高金利などに対して相対的に脆弱なイタリア経済・財政への懸念などからイタリア国債金利が上昇したこと
(4)エネルギー価格等の上昇によるユーロ圏・経常収支の赤字化
の4点が挙げられる。

ユーロドルと連動性が高い
米独金利差はユーロ安圧力へ

 米独金利差は、ユーロ圏と米国の金融政策正常化ペースの違いを反映しており、ユーロドルとの連動性が高い。米独金利差が拡大することは、ドル高・ユーロ安圧力を高める要因となる。また米独金利差は21年以降、5年物でユーロドルとの連動性が非常に高い状態が続いている。

 インフレの想定外の加速をうけ、欧州中央銀行(ECB)は、債券買い入れ縮小・終了や利上げ開始など、金融政策正常化を前倒しし、それに伴い独金利も上昇した。しかし米国の利上げペースの方が速かったため、金利差はユーロに不利に働いた。

 特に7月以降は、世界的に景気減速あるいは後退懸念が高まる中で、独金利は低下気味に推移した一方、米国では景気を犠牲にしても利上げを加速する姿勢が示されたことから、政策金利と連動しやすい2年金利を中心に上昇しやすくなった。

 この結果、米独金利差は大きく拡大し、ユーロドルのパリティ割れへの下落を主導する一因となった。