約24年ぶりのドル高
背景に米経済の強さ
円が対ドルで急速に下落している。6月下旬には、一時1ドル=137円台を記録し、1998年9月以来、23年10カ月ぶりの円安・ドル高水準をつけ、その後も135円前後で推移している。もっと、ドルは対ユーロやポンドなどでも上昇基調にあり、ドルの実効レートも大幅に上昇しており、ドル高の様相を呈している。
ドル上昇の背景には、米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げを続けるとともに、保有資産を圧縮する量的引き締め(QT)も合わせて行うなど、米国の金融引き締めが各国に先行し、さらに一段と加速するとの観測が強まっていることがある。
ウクライナ危機により、原油などの資源価格や穀物価格が上昇し、各国・地域のインフレ率の上昇をもたらしている。ただ米国では、需要面での強さもあり、インフレ率の上昇が他の先進国に比べ大きく、インフレ高進への警戒感が強く、金融引き締めも強力なものになっている。
複合循環でみた米景気
長い循環が上昇の可能性
米国の需要面での強さは、新型コロナウイルス対策で実施された各種制限措置の緩和・解除に加え、現金給付や失業給付等などをもとにした家計の過剰貯蓄が背景にあるが、米国経済が複合循環論的にみても強い局面にあることも忘れてはならない。
複合循環論とは、周期の違う景気循環の相互作用で景気の位相が規定されるとの考え方だ。米国の経済学者シュンペーターやハンセンが唱え、日本でも、篠原三代平一橋大学名誉教授らが主張し、現在でも考え方が引き継がれている。