インフレ抑制のためにFRB(米連邦準備制度理事会)は金融引き締めを急ぐ。利上げ、株安、中国経済減速、ドル高、原油高という現下の状況は2018年と酷似する。その共通点が示唆する今後の経済、市場の先行きを解説する。(SMBC日興証券 チーフ為替・外債ストラテジスト 野地 慎)
金融引き締めでインフレ抑制
FRB金融政策に見る2018年と22年の共通点
6月22日に行われたFRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長の上院銀行委員会での議会証言は、これまでの議長の発言や6月FOMC(米連邦公開市場委員会)における政策決定を踏襲するものとなった。
興味深かったのは各国・地域のインフレの「背景」に関わる発言であり、議長は「米インフレは需要主導、ユーロ圏はエネルギー主導、英は両方」としている。
主に供給制約を背景とした「一時的なもの」とされがちだった米国のインフレだったが、振り返ってみればFRBの過度な金融緩和と政府の過度な財政拡張によってもたらされた需要超過が主因であり、これを金融引き締め(総需要抑制)によって抑え込むことが適切であると議長が改めて認めた格好だ。
「ソフトランディングは達成が非常に困難になるだろう」との発言も聞かれたが、しっかり需要を抑制すればインフレを鎮静化させられるとの自信も垣間見えた格好であり、株安や住宅市場の急激な悪化にひるまない利上げの継続が期待されるところでもある。
需要超過によるインフレを金融引き締め(総需要抑制)によって抑え込むという意味では、22年は18年の金融引き締め局面と似ているといえる。
18年はトランプ減税によって米国の消費が拡大し、需要超過を介したインフレ圧力をFRBが抑制しようとしていたのだが、長期金利がFF(フェデラルファンド)金利のLonger run(長期見通し、米国の中立金利とされる)を半年以上にわたって上回っていた。
18年と22年には金融引き締め以外にもいくつかの共通点がある。その共通点が示唆する今後の経済・市場の先行きを次ページからひもといていく。