2012年はまれに見る政治の年だった。日米中露仏韓と世界の主要国で、政権が替わるか、新政権が発足した。それを投影して経済も不安定だった。さて、安倍新政権は、対外的には日中、日韓の関係改善という難題を抱える一方、大幅な金融緩和と財政出動を掲げてスタートを切る。政府部門はGDPの200%にも達する借金を抱え、再生は容易な道ではない。「巳年」の巳は草木の成長が極限に達して、次の生命が創られることを意味するという。果たして、日本は再生の糸口を見つけられるのか。そうした状況下、2013年を予想する上で、何がポイントになるのか。経営者、識者の方々にアンケートをお願いし、5つののポイントを挙げてもらった。今回は、第一生命経済研究所経済調査部の熊野英生・首席エコノミストの回答を紹介しよう。
第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト。 山口県出身。1990年横浜国立大学経済学部卒。90年日本銀行入行。2000年より第一生命経済研究所に勤務。主な著書に『バブルは別の顔をしてやってくる』(日本経済新聞出版社)など。
①安倍内閣の経済政策
理由:日本経済は、財政再建と経済成長の同時達成という隘路を進む。巨大公共事業だけでは持続的成長は得られず、政府債務は増えていく。もしも、リフレ政策の副作用として、長期金利上昇が発現すれば、財政再建が困難に陥る。安倍政権には、経済財政諮問会議などを通じて、過度に財政・金融政策に依存しない経済成長戦略へ転換することを切に願う。
②円安・株高の持続性
理由:リフレ相場が期待先行のまま進んでいる。2013年の途中で下方屈折するのか、2005年の郵政解散後のように長持ちするのか。これは、日銀がどんな金融緩和策を推進するかだけではなく、安倍政権がデフレ解消策として構造改革的な中長期的取り組みを追加できるにも依存している。実体のないリフレ期待を、地に足のついた政調政策に転換できるか。