旧統一教会、日本会議、創価学会…自民党「宗教で票集め」の冷徹な実態Photo:Anadolu Agency/gettyimages

安倍元首相の銃撃事件を機に、世間では「政治と宗教」に対する関心が高まっている。歴史をひもとくと、確かに自民党をはじめとする政党は宗教団体と密接に関係し、選挙時の「集票マシーン」として利用してきた。その一方で、宗教団体が望む政策が実現したことはほぼなく、「政教分離」の原則は守られてきたといえる。それでも筆者は、政党が宗教団体を集票組織として安易に使うことは控えるべきだと考える。「政治と宗教」の関係を具体的に述べながら、その理由を詳しく解説する。(立命館大学政策科学部教授 上久保誠人)

「政治と宗教」が関心を集めているが
宗教団体は「集票マシーン」にすぎない

 安倍晋三元首相が銃撃されて死亡した事件について、事件の背景には容疑者の「世界平和統一家庭連合(以下、旧統一教会)」対する怨恨があったと報じられている。これをきっかけに、「政治と宗教」に対する人々の関心が高まっている。

 メディアでは、過度な献金を求める宗教団体が、信者とその家族を苦しめてきた実態が批判的に報じられている。その一方で、宗教団体が政治と深い関係にあることも指摘されている。そして世間では、政治は宗教団体との関係を断ち切るべきだという論調があふれている。

 私の考えでは、政党や政治家にとっての宗教団体とは、選挙時の「集票マシーン」にすぎない。特定の宗教団体が強く求める政策が、国民全体の利益よりも優先して実現されたことは、私の知る限りほとんどないからだ。

 その代表例が、政治と神道の関係だ。神道系の宗教団体をルーツとする右派組織「日本会議」は、自民党の強力な支持団体として取り沙汰されることがある。メディアでは、日本会議の政界に対する影響力の強さが報道されることも少なくない。

 また、自民党議員の多くが、日本会議と関連がある「日本会議国会議員懇談会」と「神道政治連盟国会議員懇談会」のメンバーである(本連載第179回)。

 だが、第2次安倍政権時、日本会議が主張する保守的な政策を自民党が実行することはほとんどなかった(第144回)。むしろ、日本会議が忌み嫌っているはずの社会民主主義的な政策を次々と実現してきた。

 例えば、外国人労働者の受け入れを拡大する「改正入管法」だ。この改正案を審議していた際、日本会議は完全に沈黙していた(第200回)。

 確かに過去には、自民党の大物議員が「日本は神の国」「八紘一宇」などと発言して波紋を呼んだことがあった。だが筆者の目には、これらの発言は日本会議に対するリップサービスのように映った。