予測市場による予測の特徴
結局のところ、専門家による予測は、個人の知識や方法論というバイアスから逃れることは難しい。一方、予測市場における予測は、予測市場に参加したそれぞれの参加者の予測を集積したものである。そのため、個人によるバイアスを排除できるという大きな長所がある。
また、予測市場は不正な操作に対する頑健性も強い。しばしばネットで行われるアンケートでは不正な回答による結果の操作が観察されるが、同種の操作に対して強いのが市場の強みだ。たとえば、市場価格を下落させようと無理な売りを続けても、利益を出そうとする普通のユーザに対しては安価に購入できるチャンスを提供するだけにすぎない。そのような価格操作を試みるユーザは、一般のユーザからするとカモにしかならない。これらの集団で予測することによる個人的なバイアスの回避は、集合知メカニズムの大きな長所である。
また、原理的には、市場はいつでも取引することができるので、予測している出来事に影響のある事件などが発生した場合、その影響の価格への反映は即座に行われるというのも大きな特徴である。世論調査がある一時点における世論の断面にすぎないこととは大きな差がある。
一方、世論調査の場合、一般には回答者の属性といった豊富なデータが蓄積される。それにより、支持政党別の投票意向先などを分析することができるが、予測市場では、そのユーザがどうして取引するのかといった、価格変動の要因などの詳細分析を行う場合に求められる幾つかの属性が、別途アンケートなどを行わなければわからないのが欠点である。