定量モデルによる予測

 予測者の技量という点で、今日最も注目されるのが、先に紹介したネイト・シルバーである。シルバーは、予測技術の中ではかなりベーシックな定量的(数理的)な予測モデルを採用している。簡単に言えば、ある程度は過去の投票と同様の傾向が、今回も通用するという前提にもとづいている。

 具体的には、過去の世論調査や投票結果のデータについて信頼できる度合いを反映して、最終的な予測結果を導き出す方法である。計算そのものはそれほど難しいものではない。特に、大統領選挙は事実上2政党(2候補)に絞られるため、計算の前提は比較的シンプルである。

 実は筆者も、日本の総選挙や参議院選挙の定量モデルによるシミュレーションを週刊誌で行った経験がある。その経験を踏まえると、新政党が乱立する日本の国政選挙の結果予測のほうがはるかに難しい。

 まず、日本の場合は選挙の構造そのものが流動的である。地方では自民党が根強い支持基盤を持っている一方で、都市部では無党派が相当の割合存在しており、しばしば政治家としての実績の薄い候補へも投票する流動性がある。

 また、自民党に次ぐ第二党の育成には長い時間がかかったが、それも虚しく今回の選挙では民主党は壊滅的打撃を受けた。今後、自民党に対抗する政治勢力が安定するのかどうかは予断を許さない。特に、2012年は橋下氏の人気を背景に地域政党から国政を目指した、維新の会が存在感を発揮した。となると、様々な要素が重なりあい、予測は大変難しくなる。