2012年は世界の主要各国で重要な選挙が行われた年であった。自民の圧勝に終わったわが国の総選挙や、オバマとロムニーの討論で盛り上がった米大統領選挙は記憶に新しい。
予測という点では、アメリカの大統領選挙では数多くの予測が行われている。中でも、特に今回は50州すべての結果を予測し的中させた、ネイト・シルバーという統計の専門家に注目が集まった。シルバーは大量のデータを用い、比較的高度な数理データを構築して予測しているとされる。
「ビッグデータ」という言葉が流行しているが、インターネット上で様々なデータが収集され、また多様なマーケティングデータが統合される今日、各分野で大量データを用いた分析や予測に注目が集まっていることも、その背景として見逃せない。
もちろん、アメリカは予測市場が最も普及している国であり、選挙予測にも多く利用され、高い関心が寄せられている。そのうえ、今回はソーシャルメディアを利用した口コミによる選挙キャンペーンの効果測定など、予測のベースとなる様々な世論の観測技術の活用が行われているのも興味深い。今回は選挙をテーマに様々な予測について検討しよう。
世論調査による予測
予測市場への関心が高いアメリカであっても、選挙予測を行ううえで基本となるのは世論調査を利用した予測である。もちろん、世論調査は回答者を絞った簡易な投票のようなものであるから、投票に向けた有権者の趨勢を読み取ることができるのは当然である。
しかし、実際に世論調査の結果から予測を試みることは、それほど簡単ではない。技術的には、世論調査の実施時期、面接か電話かといった調査手法による結果への影響が大きい。また、調査手法により発生する回答者層の偏りをどのように補正するかといった、調査実施者側のスキルに求められる幾つかの課題がある。
そのうえで、世論調査の結果は、結局のところ、常に過去の調査時点における世論の一部を切り取ったものにすぎないという単純な事実をよく吟味する必要がある。世論調査の結果を元に未来の現象を予測するためには、先のスキルに加えて、調査時点以後どのように事態が推移するのかという適切な見通しが必要である。そのためには、予測者に一定の技量や知識が求められてくる。つまり世論調査は、ある時点の模擬的な投票の結果でしかないのであり、その結果から適切に選挙結果を予測できるかどうかは、予測者の技量に依存する。